「人食いバクテリア」感染症患者が最多、941人に 感染力拡大か 

 国立感染症研究所(感染研)の調査で、激症型になると死亡率が比較的高く「人食いバクテリア」とも呼ばれる「A群溶血性レンサ球菌」の感染症患者が昨年過去最多になっていたことが明らかになった。厚生労働省は自治体に検体の解析を進めるよう依頼するなど、増加の原因を調査する方針。

激症型における50歳未満の死亡率、3割に

 感染研の発表によると、「A群溶血性レンサ球菌」感染症の昨年の感染者数は941人(速報値)で、過去最多だった2019年の894人を上回った。

 この細菌は年齢問わず感染するが、多くは感染した子どもに咽頭炎が発症することが多く、この場合はそれほど危険はない。ただしまれに、血液や髄液などに侵入して激症化すると、多くの臓器の機能が一気に低下して命に関わる事態になる。

 激症型になると最初は喉の痛みから始まって発熱、下痢、嘔吐、全身の倦怠感と短時間に症状が激しくなり、最悪の場合、その後多臓器不全、呼吸不全に陥り死亡する。症例によっては、発症から数日経ずに死亡することもある。激症型に対する根本治療はない。

 感染研によると昨年の集計(昨年12月17日まで)期間中、8月から12月にかけての50歳未満の激症型患者の死亡率が32.3%(21例/65例)と高まっていることが分かった。このため自治体に対し、これまで以上に検体の収集を積極的に進めるよう求め、増加の原因を探るとしている。

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