船が陸に…海底隆起の現地調査に同行 地元漁師「水深が浅すぎて船が全部倒れてる」【被災地ルポ/石川・輪島市】   

能登半島地震の影響で、石川県輪島市では海沿いの地盤が数メートル規模で隆起したことが確認されています。静岡朝日テレビの記者が、東大地震研などの現地調査に同行しました。

富山大学 安江健一准教授:「今ちなみに見てもらうとわかるけど、(海が)干上がっている」

Q.これはどういう印象ですか?
安江准教授:「もう隆起している。海底だった部分が陸になって見えているので」

近くで調査を試みますが、海へつながる道は土砂崩れで通ることができません。迂回して、別ルートで向かうことにしました。

梅田航平記者:「今、私が立っているこの場所。もともと海だったとみられていて、地震の影響でどれくらい陸が隆起したのか調べている」

調査団スタッフ:「ラグーン(水深の浅い部分)みたいな所がここで、干上がっている」

富山大学 安江健一准教授
Q.どのあたりが海だった?
A.「海の海水準は満潮・干潮で変化するが、白い所の上面ぐらいまでがもともと海に漬かっていて」

Q.白い部分は海に漬かっていた可能性が高い?
A.「完全に今は陸化しているので、海面からあの高さまでは隆起した分だろうということで、(あの場所に)今は行けないので測っている状況。レーザーを飛ばしたら返って来るので、それで高さを測れる」

調査団は、おととし去年と、研究の一環で、輪島市周辺を調査していました。この日撮影した写真や計測したデータを過去の情報と照らし合わせ、研究を進めるといいます。

富山大学 安江健一准教授:「今のところ見ていると2m程度の隆起がここで見られる。地形が変わってくるので、人々の生活にも当然影響は出てくる」

輪島港では船が陸に

地元漁師:「(水深が)浅すぎて船が全部倒れている。浮いていない」

Q.船が陸に乗り上げている?
A.「そうそう。これだけ上がっている。真ん中ぐらいに水の跡がある」

輪島港では、地盤が隆起した影響で船が座礁しています。地元で30年以上、漁師をしている上浜さん。メバルやタラを中心に、さし網漁で生計を立てていました。

変わり果てた港を見て、途方に暮れています。

地元漁師 上浜茂喜さん:「底がつっかえて船が出せない。市場も壊滅しているし、みんな(漁師)もわからない。何が正解なのか。このままいても沖には出られないし。何かしないとだめだろうね。たぶん…」

取材した梅田記者に聞く

Q.輪島港周辺を取材していましたが、現場はどんな様子だったのでしょうか。

梅田記者:「輪島港は、港の機能が完全に崩壊してしまっている状況でした。隆起した海底が目で見えるところもあり、とても船をだせるような状態ではありませんでした」

Q.かなりの船があったように感じましたが、船の様子はどうでしたか?

梅田記者:「輪島港だけでも120隻以上の漁船がありまして、ほとんどの船は明らかな故障はないように見えました。ただ、水位が足りないので、エンジンがかかるか、確かめようにも確かめることができない状況でした。取材させていただいた漁師の上浜さんのお話では、輪島市は漁業も盛んで、代々受け継いでいる方も多いようです。輪島市は港町として発展していたこともあって、朝市の火災や住宅崩壊に加えて、多くの被災者が、今後、今の仕事を継続していけるのかと不安を口にする方も多くいました」

Q.実際に大きな被害を受けた、今回の海底隆起ですが、一体どういうものなんでしょうか。

梅田記者:「今回の地震では断層がずれた影響で、この能登半島北側を中心に広い範囲でもともと海底だったところが陸になるなどの隆起が確認されています。輪島市の別の港では、4メートルもの隆起もあったこともわかっています」

Q.県内でも南海トラフ地震が想定されていますが、その際に、同じようなことは起こりえるのでしょうか。

梅田記者:「静岡大学の生田准教授によると、南海トラフ地震の際、県内でも富士川の西岸から御前崎市付近にかけて、1メートル強の海底隆起の可能性があるということです。場合によっては今回と同じ規模での隆起の可能性も指摘しています。取材を通して、県内でも海底隆起に備えて、支援物資の緊急輸送路、避難ルートの確保など、今のうちから様々な選択肢を用意しておく必要があると感じました」

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