「本州クマゲラ保全を」環境省に要望

堀上審議官(左)に要望書を手渡す藤井理事長(中)、大野部長=17日、環境省

 日本自然保護協会など3団体は17日、白神山地をはじめ本州に生息するクマゲラの個体群が絶滅の危機にひんしているとして、絶滅危惧レベルの格上げや実態調査を環境省に要望した。クマゲラを巡って同協会などが国に要望するのは初めて。

 同協会の大野正人保護・教育部長、NPO法人「本州産クマゲラ研究会」の藤井忠志理事長(盛岡市)ら3人が同省を訪れ、堀上勝大臣官房審議官に要望書を手渡した。弘前市の作家・根深誠さんが代表の市民グループ「津軽百年の森づくり」も要望書に名前を連ねた。

 要望では、現在の絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大)からⅠ類(絶滅の危機)への格上げ、各省庁による協議の場の設置などを求めた。非公開の要望後、同省の担当者は取材に「まず情報を収集し、林野庁とも意見交換して何ができるかを考えたい」と述べた。

 クマゲラは世界自然遺産・白神山地のシンボル的なキツツキだが、白神での目撃情報は2014年が最後。本州の代表的な生息地である秋田県の森吉山でも17年の撮影記録を最後に途絶えている。北海道では比較的多く見られるものの、本州産とは生態が異なる。同研究会は、本州産が津軽海峡を境にすみ分けて遺伝子をつないできた「地域個体群」とみており、亜種として扱うよう提唱する研究者もいる。

 藤井理事長は、本州産の個体数が88~122羽とする過去の試算を示しつつ「鳥類の種を維持できるぎりぎりの状態で、今はより少ない」と説明。近年の調査では生息の痕跡が見つかっていないと危機感をあらわにした。

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