【感染症ニュース】2023年梅毒の患者報告数は14906人 医師「予防・早期検査・早期治療が大切。先天梅毒防ぎたい」

今年も梅毒の感染に注意を!

国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年52週(12/25〜31) 速報データによると、去年の梅毒の患者報告数は14906人。3年連続の増加で、1999年に現在の調査方法で統計を取り始めて以来、過去最多となりました。10年前(2013年)と比較すると、報告数は約12倍にもなっており、大きな流行が続いています。都道府県別では、東京3658人、大阪1967人、福岡939人、愛知817人、北海道677人、神奈川659人と大都市圏が多くなっています。男性では20〜50代が多く、女性では20代が多くなっています。また報告数の約3割が女性というデータもあります。

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梅毒とはどのような感染症?

梅毒とは、梅毒トレポネーマという病原体により引き起こされる感染症で、主にセックスなどの性的接触により、口や性器などの粘膜や皮膚から感染します。オーラルセックス(口腔性交)やアナルセックス(肛門性交)などでも感染します。また、一度治っても再び感染することがあります。梅毒に感染すると、性器や口の中に小豆や指先くらいのしこりができたり、痛み、かゆみのないほっ疹が手のひらや体中に広がることがあります。また、これらの症状が消えても感染力が残っているのが特徴です。治療しないまま放置していると、数年から数十年の間に心臓や血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、特には死にいたることもあります。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「年々増加する梅毒の患者数ですが、今のところ流行を防止する有効な手段がないというのが現状だと思います。まずは予防…感染しないための正しい知識を得ること。そして感染したとしても早期診断・治療を行い、他の人にうつさないことが、流行を抑えるためには必要なことです。梅毒の感染拡大には性風俗産業が大きく関わっていますが、梅毒の正しい知識を持つこと。そして利用者をはじめ多くの人に正しい知識を伝えていくことが重要だと思います」と話しています。

梅毒の予防法は?

梅毒にかからないためには、感染者との性的な接触を行わないことが最も重要ですが、相手が感染しているかどうかわからないので、性的な接触をする際に、感染しないようにすることが重要です。梅毒の病変の存在に気が付かないこともあるので、性交渉の際はコンドームを適切に使用して、粘膜や皮膚が梅毒の病変に直接接触しないようにしましょう。ただし、コンドームが覆わない部分から感染する可能性もあるため、コンドームで100%予防できると過信はしないようにしましょう。もし皮膚や粘膜に異常を認めた場合は、性的な接触を控え、早めに医療機関を受診して相談しましょう

梅毒の治療法は?

梅毒はペニシリン系などの抗菌薬が有効です。国内では、抗菌薬の内服治療が一般的に行われてきましたが、現在は世界的な標準治療薬であるベンジルペニシリンベンザチン筋注製剤の国内での製造販売が承認されました。早期梅毒であれば1回の注射で、後期梅毒の場合は、3回の注射で治療が可能です。内服治療の場合、内服期間は病期などを考慮して医師が判断します。医師の許可を得るまでは、症状が良くなっても自己判断で内服を中断しないようにしましょう。いずれの場合も医師が全と判断するまでは、性交渉などの感染拡大につながる行為は避けましょう。

梅毒は何度も感染を繰り返す

また。梅毒は完治しても免疫はできないので、再び感染する可能性があります。せっかく完治しても、同じような行動を繰り返すならば、再び感染し、自分もパートナーも辛い思いをすることになります。

感染の不安があるときは、まず検査を

梅毒に感染しているかどうかは、一般的には医師による診察と、血液検査(抗体検査)により、梅毒にかかっているかどうかが判断されます。検査は医療機関のほか、地域によっては保健所などで匿名/無料で検査できるところもあります。感染の可能性がある周囲の方(パートナーなど)も検査を受け、必要に応じて治療を受けることが重要です。また、妊娠している女性は、おなかの赤ちゃんが先天梅毒になるのを防ぐために、妊婦健診を必ず受けましょう。妊娠初期に適切な治療を行えば、先天梅毒の予防に一定の効果があるとされています。

引用
国立感染症研究所 感染症発生動向調査週報 2023年52週(12/25〜31)、梅毒合併妊婦に対する治療と先天梅毒の現状(IASR Vol. 44 p195-197: 2023年12月号)

厚生労働省HP:梅毒、梅毒に関するQ&A

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏

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