「諦めない」カメムシ育成 農研機構 無農薬で害虫防除 茨城・つくば

害虫防除が期待されるタイリクヒメハナカメムシ(農研機構提供)

農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、茨城県つくば市)は17日、ナスに付く害虫を粘り強く探して捕食する天敵昆虫のカメムシを育成したと発表した。他より餌を探し回る個体を選別して掛け合わせたことで、作物に付く害虫が少ない状況でも長く定着。従来に比べ約2倍の防除効果があるという。

野菜栽培などでは、農薬の代わりに害虫を捕食する「天敵昆虫」が活用されているが、農研機構によると、餌となる害虫が少ないと天敵昆虫がほ場の外へ去ってしまったり、餌を見つけられずに死んでしまったりするなどの課題があった。

農研機構は、ナスの生育に害を及ぼすアザミウマの天敵昆虫「タイリクヒメハナカメムシ」(体長約2ミリ)を使った研究を実施。同じ餌場を動き回り続ける「すぐに諦めない」個体を選別して30~40世代にわたり交配を繰り返した。この結果、従来個体に比べ、ナス1株当たりに定着する個体数がほぼ倍増した。粘り強く食べ続けるため、アザミウマの発生が抑制されたという。

農研機構は2030年ごろまでの実用化を目指す。昆虫の「すぐに諦めない」性質に関連する遺伝子解明も進めてカメムシ以外の天敵昆虫へ応用し、さまざまな栽培環境における活用につなげたい考え。

研究に取り組んだ世古智一上級研究員は「餌の探索行動に関係する遺伝子を見つけられれば、一気に(他の天敵昆虫へ)展開できるだろう」と話した。

© 株式会社茨城新聞社