住宅用断熱建材市場に関する調査を実施(2023年)~2022年度の住宅用断熱材(7分野計)市場規模は、数量ベースでは前年度比0.9%減の34万5,336t、金額ベースでは同4.5%増の1,818億円、今後は新築住宅の高断熱化ニーズの高まりにより、住宅用断熱材は市場拡大を見込む~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の住宅用断熱建材市場を調査し、出荷量・市場規模、分野別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。ここでは、住宅用断熱材の市場規模推移・予測について、公表する。

1.市場概況

2022年度の住宅用断熱材市場(メーカー出荷ベース)は、数量ベースでは前年度比0.9%減の34万5,336t、金額ベースでは同4.5%増の1,818億円と推計した。数量ベースの市場規模は微減となったが、金額ベースの市場規模は高性能な断熱材の販売増加による単価上昇や、原材料費や物流費の上昇等を背景とした価格改定の影響により増加となった。

2.注目トピック~断熱材メーカーは「環境への取組」を強化

大手企業を中心に住宅用建材市場全体で環境への取組をサプライチェーン全体で進める方針が強くなる中、断熱材メーカーにおいても、自然由来の原料を用いた商品開発、リサイクルシステムの構築、廃材の活用、環境配慮型商品ブランドの立ち上げなど、各社の強みを活かした取組が進んでいる。2023年においては、CO₂排出量の可視化や環境への取組に関する第三者機関の認定取得などの取組が多く見られた。

今後は、断熱材の生産から断熱材が使用された建築物の解体時に至るまでの幅広いフェーズにおいて、CO₂排出削減に寄与するような素材・工法の開発、生産プロセスの開発、リサイクルシステムの構築など、環境を意識した取組を強化していくことが要点となる。

3.将来展望

2023年度の住宅用断熱材市場は、数量ベースでは前年度比0.2%増の34万6,000t、金額ベースでは同3.3%増の1,878億円の見込みである。

これまで、大手ハウスメーカーを中心に、住宅の断熱等性能等級4の標準仕様化やZEH(Net Zero Energy House:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)化などが進んできた。2025年度から全ての新築住宅に省エネルギー基準の適合が義務付けられることや、長期優良住宅や低炭素建築物の認定基準が引き上げられたことなどから、住宅の高断熱化への取組はハウスビルダーや地域の工務店など住宅供給事業者全体にまで広がっている。今後もその動向が続くとみられ、高性能断熱材の需要が高まることで、住宅用断熱材市場は拡大する見通しである。

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