青森山田の戦いぶり、地元紙記者はこう見た 全国高校サッカー

2大会ぶり4度目の選手権優勝を果たし、声援に応えながらスタジアムを後にする青森山田の選手たち=8日、東京・国立競技場

 首都圏で行われた第102回全国高校サッカー選手権で4度目の頂点に立った青森山田。優勝候補の一角として注目を集める中、前評判通りの力を発揮した。16日には青森市内でパレードを行い、県民から祝福されたイレブン。取材に携わった東奥日報の記者たちが優勝の背景を語る。

 O プロ内定者を擁する尚志(福島)、神村学園(鹿児島)、静岡学園などが姿を消す中、青森山田の強さが際立った。

 N 青森山田はフィジカル重視と見られがちだが、高い技術に裏打ちされたハイプレスと鋭いカウンターは多くの関係者をうならせた。近江(滋賀)の前田高孝監督が「ロングスローも脅威だが、ただそれだけで勝ってきたのではない。(ゴールに向かって)最短最速で技術を発揮するチーム」と評したのが印象的だった。

 O 初戦で飯塚(福岡)に勝てたのも大きかった。飯塚の徹底したハイプレスには驚いた。FW米谷壮史が最後に決めきるのはさすが。前回大会のエース小湊絆(現法政大)は高円宮杯プレミアリーグの米谷のプレーを見て「以前とは全然違う。ポストプレーや動き出し、ボールを要求するセンス、全てのレベルが高い」と成長に驚いていたよ。

 H 米谷は試合後のインタビューでたびたび津軽弁が出て、関東圏の取材陣が多い中でなんだかほっとした。同郷の誇らしさを感じられた。米谷は決勝で青森山田の選手権通算200得点目となるメモリアルゴールを決めた。その瞬間は思わずガッツポーズをしてしまった。

 N 大会中は、黒田剛前総監督が指揮を執るJ1町田が練習場を提供したことも話題になった。黒田氏は青森山田が町田の練習場で調整した5日間全てに顔を出した。厳しいプロの世界に身を置いていながら、以前より柔らかい印象になっていたのは新鮮な驚き。久しぶりだったからかもしれないけれど、青森から駆けつけた報道陣の一人一人と握手もしてくれて、サービス精神もプロ仕様になっていた(笑)。

 O 開催地に近い首都圏の高校は普段の練習場を使えるというメリットがある。

 N 逆に青森の高校は離れた土地に遠征して2週間滞在するだけでも大きなハンディ。黒田氏によると、過去には使用料を支払ってJクラブの練習場を使わせてもらったこともあったとか。今回は「全面無料」。「高校生にこういう施設を体験してもらうことで、よりプロに行きたいという気持ちになってくれれば」と語っていた。

 O 練習の最後に行うPKはDF小泉佳絃がなかなか決められず黒田氏がマンツーマンで教えていた。あまりに熱い?指導で練習時間をオーバーしそうになって正木昌宣監督が必死に止める姿に笑いが起こっていたね。

 H PKといえば初戦の飯塚戦、準決勝の市船橋(千葉)戦で計3本を止めたGK鈴木将永は個人的なMVP。得点力に目がいきがちな青森山田だが、その攻撃も強固な守備があってこそ。主将山本虎、小泉のCBコンビ、黒子に徹しピンチの芽を摘んだMF菅澤凱の奮闘も見事だった。自分は野球部で捕手をしていたから守備重視の見方になってしまう。

 O ほかに気になった選手はいたかな?

 N 10番を背負ったMF芝田玲。全試合に先発した前回大会では存在感を示せなかったけれど、今大会では中盤で攻撃のタクトを堂々と振った。身長170センチだが相手に競り負けることもなく、たくましさが増した。2021年度の青森山田で高校主要タイトル3冠を達成したMF藤森颯太ら先輩がいる強豪明治大に進学予定。成長を続ければ、4年後にプロ入りの可能性は高い。

 O 主将山本が背中でチームを引っ張る姿も素晴らしかった。山本は決勝翌日に、小学校時代に所属した青森FCを電撃訪問。子どもたちはとても喜んでいた。某サッカー専門誌が発行する今大会の選手名鑑のアンケート欄で自身のキャッチコピーを「青森が生んだスーパースター」と答えていた。選手権後、まさにそんな存在になった。

 H 今季は青森県出身選手が多かった。「青森で生まれ育った自分たちが全国優勝して希望を与えたい」と山本が語っていたように、青森県出身でも活躍できるということを子どもたちに示した大会だった。強豪の宿命でもあるが、判官びいきの矢面に立たされることも多いけれど、大会後に選手が発した「素直に強さを認めて」との言葉に同感。選手権、高円宮杯プレミアリーグとの2冠達成は雨の日も、雪の日も、努力を惜しまなかった結果であると声を大にして言いたい。

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