【イノベーター】群馬のIT人材課題解決と「東京より群馬で働きたい」若者の雇用創出を目指す 株式会社Vitalize 取締役 / 前橋支社長 小林 洋平

株式会社Vitalize取締役/前橋支社長、小林洋平さんが一貫して注目してきたのは「人材教育」でした。彼がVitalizeに参画した背景には、IT業界の人材不足とその解決の鍵を教育に見いだす、深い洞察とビジョンがありました。エンジニアリングを通して社会を活性化させる目標を持ち、技術力だけでなくヒューマンスキルも重視する彼の哲学は、社員一人ひとりの可能性を最大限に引き出し、社内だけでなく、前橋の地域にも新しい価値を生み出しています。今回は小林洋平さんの学生時代から就職、転職、そして群馬への移住までの経緯や今後の取り組みについてお話を伺いました。

株式会社Vitalize 取締役 / 前橋支社長 小林 洋平さん

接客業を通じて人との関わりが楽しいものに

―学生時代に取り組んでいたことを教えてください

武蔵工業大学に在学中はITや情報系の勉強に熱中しながらも、飲食業のアルバイトで接客の楽しさを知り、それが私のキャリアの方向性を変えていきました。接客業は、一生懸命さや真摯な態度が、お客様からの「ありがとう」に繋がり、直接的なフィードバックを受けることができます。私は元々、コミュニケーションを取ることが苦手でしたが、接客業を通じて自信を持てるようになり、次第に人とのコミュニケーションが楽しいものと感じるようになりました。

―新卒での就職活動はいかがでしたか

僕がドラッグストアの会社を選んだ理由の一つに、バリアフリーに対するその会社の取り組みがありました。大学時代に人間工学を学び、バリアフリーの重要性について深く理解していた私は、その店舗が実現しているバリアフリーに感動しました。デザインや買い物しやすい環境への配慮、様々な立場の人が同じように買い物を楽しめる環境作りに私は感銘を受け、ここで働きたいと思いました。

―実際に働き始めてからのことも教えてください

最初は販売員として働き始め、経験を積むにつれて役職も店長、エリアマネージャーと昇級しました。販売員時代は「レジキャッシャーコンテスト」で2000名の中から4位に表彰され、その実績で店長時代は全社の接客レベルを改善するプロジェクトに参画しています。クレームがピタッと止まった、という声もあり多店舗の教育に携わるやりがいを感じましたね。また社内でPCに詳しいと評判が広がり、PC関連の相談を受ける中で帳票の見たいものを自動で出力するスクリプトを書いたりもしていました。業務改善に繋がったので嬉しかったです。

「IT人材不足をなくす人」を目指して転職

―転職を考えたきっかけは何ですか

大きく2つのきっかけがあります。1つ目は「家族との時間」です。エリアマネージャーとして11店舗も見ているとトラブルが多発して常に携帯がなり、1日100件のメール全てに目を通していました。土日も休みが取れない、そんな忙しかった頃に今の妻とちょうど婚約したんです。今後、子供ができた時に今の働き方では妻の負担が大きいと思い転職を考えました。
もう1つのきっかけは「IT人材教育への関心」です。IT業界は長らく人不足と言われている状況を見て「教育がうまくいっていないんだ」と思い、興味を持ちました。第2の人生のチャレンジだと思い、業界トップのエンジニアスクールに通い、短期フルコミットでプログラミング学習に没頭しました。独学も考えましたが「IT人材不足を解決する人になりたい」と決心した私は当時の最先端の教育を知るため、そのスクールに通うことを選びました。

―転職先のVitalizeはどのように見つけましたか

「IT人材の教育」を考えた時に、リモートで横の繋がりが作りづらい企業ではなく、対面で会って表情や仕草などの非言語コミュニケーションを大事にできる環境を求めていました。最初は転職サービスを使ってみたものの、なかなか良い企業が見当たらず、Twitterを見ていたら青空と田舎の一本道の画像を背景に「地方創生エンジニア募集中」という投稿がタイムラインに流れてきました。「エンジニアなのに地方創生ってどういうことだろう」と思ってHPを見たら「エンジニアリングは手段であって、やりたいことは日本を活性化すること」というメッセージを見て「これだ!」と思いました。これがVitalizeとの出会いになります。面接官は実務未経験でも前職で頑張ってきた経験や顧客折衝経験を評価してくれました。エンジニアとしての大変さを聞きながらも、至らない技術面は努力でカバーできると思い、早い段階で入社を決めました。

転職活動時のVitalizeとの出会いについて話す小林さん

―Vitalizeに入社してからのことを教えてください

入社間もない頃から、積極的にお客様とコミュニケーションをとっていました。しかし、当初は知らない単語が多く、分からないことがあると睡眠時間を削っての学習が日常でした。そんな中、最後にはお客様に満足してもらえて、未経験者でも何とかやっていけると自信を持てました。入社して3ヶ月が経ち、エンジニアの仕事を一通り覚えた後は新入社員のメンターとして人材教育に携わっています。お客様とやり取りをしながら新入社員の教育を行うのは本当に難しかったです。なんとかしたい一心で3人1組のチームにして新入社員同士でも教え合う方法を実践し、今ではその方法が定着しています。教えることで教えた人の理解も深まり、チーム戦にしたことで新入社員の成長速度が上がりましたね。

面白さを求めて東京から群馬に

―なぜ群馬に移住したのでしょうか

新宿本社で勤務していた時に代表から「前橋視察に行くぞ」と突然誘われ、最初は言われるままついて行きました。「これから群馬は面白くなる」「前橋ではこんな取り組みしてるよ」と群馬のパートナー企業の方からまちづくりの話をしてもらえ、官民一体で行う事例を話す皆さんの顔が生き生きしていたのをよく覚えています。話しを聞く中で、最先端デジタル県を目指す群馬県ではIT人材が圧倒的に不足しているという課題が私の心に響いて、「東京より群馬で頑張る方が面白そうだ」と思いました。それが前橋支社立ち上げと移住を決めた理由です。妻が群馬出身で普段から群馬の魅力を聞いていたので、「何かやるなら群馬だなぁ」と思っていましたし、きっと代表はそこも計算して私を群馬に連れて行ったんだと思います。

―移住して感じた群馬の魅力はありますか

群馬の中でも私が住む前橋の話になりますが、特殊な街だと感じています。他人に対する興味関心が高く、街を歩いているとドラクエみたいに人との出会いが生まれるんです。休みの日に妻と散歩していたら「ムーカフェ」というお店を見つけ、中に入ってお茶をしました。店員さんがラジオパーソナリティをしている方で「ラジオに出ませんか」と誘われ、その場でラジオ出演が決まりました。こんな出会いが日常茶飯事で、話しかけられやすく、話しかけやすいオープンで交流が生まれやすい街です。「前橋市アーバンデザイン」などのビジョンが制定され「前橋はこうなっていくんだ」という共通認識を持っていることが、人と人が繋がりやすい環境を作っているのかもしれません。

群馬のIT課題を解決するエンジニアを増やすために

―現在取り組んでいることを教えてください

3人でスタートした前橋支社が、現在は9名まで増えました。これからもっと規模を大きくしていくために採用に力を入れています。Wantedlyなどのオンライン採用ツールだけでなく、リアルな場での接点も求め街のイベントに参加しています。DJをやっているので街中イベントでDJをやっている時に自社を知ってもらうこともあります。見方によっては遊んでいるように見えますが、遊びも仕事も100%でIT業界のネガティブなイメージを払拭したいです。

社外での取り組みも一つ紹介させてください。これも街中イベントですが「上毛かるたのタイピングアプリ」を作って出展したんです。子供から大人まで多くの人に挑戦してもらい、小学校関係の人からは「これは絶対小学校でやったらいいよ」と言ってもらいました。ゲーム形式でやることでモチベーション高く、上毛かるたとタイピングを学べる一石二鳥のアプリです。

前橋の街中イベントのために作成した「上毛かるたのタイピングアプリ」

前橋の街中イベントに出展した時の様子

―今後、挑戦しようとしていることはありますか

ITの窓口を広げるために、コワーキングスペースなどを作って学生さんたちと常に繋がれる場所が必要だと感じています。高崎経済大学や前橋工科大学などの群馬の学生さんたちが「東京より群馬で働きたい」と思えるようなイメージを作りたいです。Vitalizeでは東京で営業し頂いた案件を支社で引き受けているので給与も高く提示でき、昇級率も高いです。群馬で働くエンジニアが増えれば群馬のIT課題の解決にも繋がるので力を入れていきたいです。

(プロフィール)
株式会社Vitalize
取締役 / 前橋支社長
小林 洋平
神奈川県出身
・学生時代から接客業でコミュニケーション能力を磨く
・新卒ではバリアフリーに注目し、ドラッグストアでの経験を積む
・家族との時間確保とIT人材教育への興味から転職
・Vitalizeでエンジニアリングと教育に取り組む
・群馬に移住し、前橋支社立ち上げ
・新入社員の採用と教育に尽力
・上毛かるたのタイピングアプリ作成、地域イベントへの出展

株式会社Vitalize の採用情報はこちら
https://recruit.vitalize.co.jp/

【編集部後記】
「東京より群馬で働きたい」と思える学生を増やそうとする小林さんの試みを通じて、活力ある群馬の学生が地元に残り地域活性に取り組む未来を見ました。雇用が生まれIT人材が育成されることで群馬のIT課題が解決され、デジタル最先端を行くことを願っています。私自身、小林さんと同じ東京からの移住組として外から来て気付いた群馬の良さを発信していきたいです。(ライター:大和隆生)

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