大久保被告がSNSで「力をお貸しします」 海外で安楽死望んだ難病女性が証言 ALS嘱託殺人裁判

京都地裁

 難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患う女性から依頼され、薬物を投与して殺害したとして、嘱託殺人などの罪に問われた医師大久保愉一(よしかず)被告(45)の裁判員裁判の第4回公判が18日、京都地裁(川上宏裁判長)であった。海外での安楽死を望んでいた別の難病の女性患者が出廷し、交流サイト(SNS)上で大久保被告から「力をお貸ししますよ」とメッセージがあったことをきっかけに、安楽死に必要な診断書の作成に至ったと証言した。

 検察側によると、患者は、スイスの自殺ほう助団体に提出する診断書を作成する医師を探していたとされる。大久保被告は、2019年9月に患者の診断書を他人名義で偽造したとして、有印公文書偽造罪でも起訴され、今回の公判で併せて審理されている。

 患者は弁護側の証人尋問で、6歳の時、四肢の筋力が徐々に低下し動かなくなっていく「慢性炎症性脱髄性多発神経炎」(CIDP)の診断を受け、両親の介助を受けて生活していたと説明。生きづらさを抱え、20代だった19年7月ごろ、当時の通院先でスイスでの安楽死に必要な診断書の作成を依頼したが断られたという。ツイッター(現X)に状況を投稿したところ、関心を示した大久保被告から「力をお貸ししますよ」と連絡があり、作成を依頼したと述べた。

 患者は、大久保被告が依頼を引き受けたことで「救われたような思いがした」と振り返った。一方で、21年9月に父親とスイスに渡航し、医師の立ち会いの下で安楽死に臨んだ際には、致死薬を飲む直前に家族のことが頭をよぎり、思いとどまったという。

 公判で大久保被告は診断書の偽造を認めているが、弁護側は証拠の収集手続きに違法性があるなどとして、無罪を主張している。

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