誰でもカーブ運転上手 神奈川工科大・山門教授が制御技術開発 マツダが採用

 エンジンの駆動力を制御することでカーブをスムーズに走れる技術を、神奈川工科大(厚木市下荻野)の山門(やまかど)誠教授が開発した。自動車大手マツダ(広島県)が採用し、今夏にも世界で初めて市販車に搭載される。ハンドルとブレーキの操作を同時にこなす必要があるカーブ走行時に、運転が苦手の人でも上手なドライバーのように走れるという。日立製作所を加えた3者による共同研究で実現した。

 山門教授によると、運転の上手な人はカーブ進入時にハンドルを切るのに合わせてブレーキを軽く踏み、車体の重みを前輪にかける。こうすることでハンドルがよく利く状態をつくり出し、スムーズにカーブを走る。運転の苦手な人はハンドル操作と減速がなめらかに連携できず、車体がぎくしゃくしてしまう。

 「G−ベクタリングコントロール技術」と名付けられた新技術は、カーブ進入時のハンドル操作に合わせてエンジン出力をわずかに絞り、前輪に荷重がかかるように制御する。荷重はわずかで、ほとんど気づかない程度という。制御はソフトウエアで実現するため「新たな部品が不要なことが大きなメリット」と山門教授。

 現在は神奈川工科大の自動車システム開発工学科で研究に取り組むが、もともとは日立製作所の研究者。20年ほど前から、日立に在籍しながら同大の安部正人名誉教授の下で車両制御の研究に打ち込んできた。

 新技術のポイントは「ハンドル操作で発生する横向き加速度の変化量を、たすき掛けのように車両の前後方向の荷重変化に結びつけること」。思いつくのに10年かかったという。2007年に博士論文にまとめ発表した。

 マツダはこの数年、スカイアクティブと呼ぶ新技術とともに「人馬一体」の乗り心地を提唱している。車両開発担当者は「上手なドライバーの運転をソフトに取り入れて最大限に生かす山門教授の研究が、われわれの方向性と同じだった」と評価しており、今夏から順にすべての車種に同技術を取り入れる。

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