地震被害の土蔵守れ 射水の明石さん、専門家集め修復へ 氷見や高岡、射水 CFで資金募る

破損があった土蔵を視察する関係者=10日、高岡市内(明石さん提供)

 能登半島地震で損壊した土蔵を守る取り組みが富山県内で始まった。土壁が崩れたために蔵を解体、撤去する動きが県内で出ていることを知った、射水市のまちづくり会社の男性が中心となり、左官業などの専門家を集め、修復に当たる計画だ。クラウドファンディング(CF)で活動資金を募る。歴史を伝え、まちの景観を構成する貴重な文化資産を後世に残そうと協力を呼び掛けている。

 活動を発案したのは、富山のまちづくりに取り組む会社「空と箱」の明石博之さん(52)。きっかけは地震直後に見つけた交流サイト(SNS)の書き込みだった。「土蔵の壁が落ちて復旧にお金が掛かる」「これを機に解体する」といったコメントが写真とともに幾つも投稿されていた。

 明石さんによると、土蔵の土壁は地震の衝撃を柔軟に受け流し、蔵の構造(基礎)を守るために崩れるように作られている。揺れが大きい時ほど崩れ落ちるが、塗り直せば今後も蔵を安心して使い続けられる。

 明石さんは、土壁の機能を知らずに所有者が解体、撤去してしまうのはもったいないと考え、伝統工法に詳しい建築士や大工、左官業の知人に協力を依頼。被害が大きかった氷見市や、重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)の高岡市吉久、同市伏木地区、射水市新湊地区などで「修復作戦」を進めることにした。

 完全な倒壊や雨漏りをしてないこと、今後も建物を維持管理する意向があることなどを確認した上で修復に協力する。クラウドファンディングや行政による補助で資金を集め、所有者の負担をできる限り減らす。

 10日は明石さんら6人が被害を受けた伏木、吉久の土蔵4カ所を視察した。壁ごと落ち、構造部分が見える土蔵もあり、被害の大きさを体感したという。明石さんは「長期的な取り組みになるが、少しでも多くの土蔵を救いたい」と話した。

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