[社説]共産党 初の女性党首 党の「変わった姿」示せ

 共産党が変われば日本の政治は変わる。

 ひいき目で言うのではない。共産党が「開かれた党」に脱皮し、安保・自衛隊などの基本政策で他の野党と合意することができれば、日本の政治は間違いなく変わる。そういう意味である。

 共産党は第29回党大会で、志位和夫委員長(69)が退任し、後任に田村智子政策委員長(58)を充てる人事を決めた。

 委員長交代は志位氏が就任した2000年11月以来、約23年ぶり。今年で創立102年を迎える日本共産党に女性の委員長が誕生するのは初めてである。

 共産党を取り巻く政治環境は至って厳しい。

 比例代表の得票数は1996年衆院選の726万票をピークに、2022年参院選では361万票まで減少した。

 それだけではない。1990年に約50万人いた党員は約25万人に落ち込んだ。

 現行の小選挙区制の下では、候補者を一本化しない限り、自民・公明の統一候補に勝つことはできない。

 だが連合は次期衆院選で共産党の支援を受ける候補者は推薦しない方針を明らかにした。

 今が政権交代の最大のチャンスのはずなのに、野党連合政権の声はどこからも聞こえてこない。

 党首公選制を訴えた党員らを除名したことも共産党という政党のイメージを悪くした。閉鎖的な体質を改め、イメージを変えることなしに、党勢回復を図るのは難しい。

■    ■

 一方で、時代の要請とも言える女性党首の誕生は、男性偏重の政治を変える契機になるかもしれない。

 世界経済フォーラムが男女格差の状況を調べた「ジェンダー・ギャップ報告」で、日本は対象146カ国中125位、政治分野では138位と最低水準にある。

 女性首相が誕生していないこと、女性議員が少ないことが足を引っ張っている。

 だが、第2次岸田再改造内閣の副大臣と政務官人事で女性がゼロだったことが象徴するように、岸田政権にジェンダー格差を本気で是正しようとの意思は感じられない。

 政治の景色を変えることが、多様性の実現、性暴力・貧困・非正規雇用といった政策課題の解決、国際人権の定着への大きな力になる。

 田村新委員長には、幅広い勢力を結集することに力を尽くし、停滞した政治に新風を吹き込んでもらいたい。

■    ■

 復帰前、「異民族統治」を批判し続けてきた沖縄人民党は復帰翌年の73年10月、日本共産党に合流した。

 共産党県委員会は復帰後の野党共闘や現在の「オール沖縄」を行動面で支えてきた。

 復帰から今年で52年。名護市辺野古の新基地建設と日米一体となった軍事要塞(ようさい)化が、本土では考えられないような勢いで進み、住民の不安をかき立てている。

 事実に基づく追及力で定評のある新委員長が、あまりにも理不尽なこの問題に国会でどのように切り込んでいくか、注視したい。

© 株式会社沖縄タイムス社