トップの指示解明へ 水戸京成百貨店元社長逮捕 発覚1年、関与と判断 茨城

任意同行により捜査車両で水戸署に到着した斎藤貢容疑者(奥左)=18日午後0時半ごろ、同署

水戸京成百貨店(茨城県水戸市)が国の雇用調整助成金(雇調金)を不正受給していた事件で、茨城県警は元社長、斎藤貢容疑者(66)を詐欺容疑での逮捕に踏み切った。捜査関係者によると、従業員への聞き取りなどから総務部長への指示があったと判断した。今後は不正受給の実態解明や共犯者の有無などについて調べを進める。一方、県内唯一の百貨店である同社の不祥事に連携する自治体や市民からは「残念」「信頼回復を」と厳しい声が上がった。

18日午前、千葉県柏市の斎藤容疑者の自宅に県警の捜査員が訪れた。同10時40分ごろ、捜査員に任意同行を求められた斎藤容疑者は、黒いスーツに緑色のジャンパーを着用し、バッグを片手にしっかりした足取りで車両に乗り込んだ。

斎藤容疑者は逮捕前、茨城新聞の複数回の取材に対し、不正受給への関与を否定。2020年4月、総務部長(当時)に雇調金を申請できるか尋ね、「この状態が続くと会社が持たない」と話したが、「不正をしろという話ではなかった」と強調した。

一方で総務部長は取材に対し、「対面で社長の指示を受けてやった。不正期間中もずっと報告していた」と斎藤容疑者と食い違う説明をした。指示に従った理由について「京成グループの子会社なので、外から来た社長を守らないといけないと思った。今思うと間違っていた」と語った。

総務部長によると、20年4~5月にかけて、斎藤容疑者から休業したように偽ることを指示され、休業日数に応じた収支の見積もりを人事担当者らが複数作成。斎藤容疑者にも提示したという。これらの資料は県警にも提出した。

同社は社内調査の結果、不正は総務部長が指示役となり、当時の人事担当ら4人が関与したと結論づけた。総務部長は「社長から指示があった」と説明したが、調査チームは指示を裏付けるものはないとした。

県警は休日を水増しされた従業員や人事担当者らを含め聞き取りを実施。押収した大量の勤務資料などを調べ、斎藤容疑者の関与があったとして「総合的に判断」(関係者)した。捜査2課は、今回の逮捕について「京成の結論とは独立し、あくまで捜査機関として事実を評価した結果だ」と話している。

茨城労働局は22年11月、不正発覚に先立ち同社の査察を実施。同社も社内調査を行い、同12月に総務部長がデータ改ざんを認めた。昨年1月には、弁護士や京成電鉄(千葉県)で構成する調査チームが関係者に聞き取りし、調査報告書を茨城労働局に提出。同2月、ペナルティーを含めた約13億4400万円を国に返還。親会社の京成電鉄から全額を借り入れた。

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