富山県氷見市全域で水道復旧 能登半島地震、700戸は飲用できず

自宅の流し台の蛇口をひねり、通水を確認する住民=18日午後2時40分ごろ、氷見市中波

 能登半島地震の影響で断水が続いていた富山県氷見市最北部の脇、中波の両地区は18日までに通水し、市内全域で水道が使えるようになった。両地区で飲用可能となるにはまだ日数を要する見通しだが、生活用水としては利用できる。地震から2週間以上たってようやく重要なライフラインがつながり、住民は「たくさん洗濯ができる」「少しずつ日常が戻ってきた」と安堵(あんど)した。

 県によると、18日までに両地区で新たに130戸が通水。市内の全世帯で水道を利用できる。

 石川県に接する脇地区の寺脇幹男さん(68)方では、17日午後3時ごろに蛇口から水が出るようになった。これまでは自宅の井戸からくみ上げた水をバスタブにため、そこからさらにバケツに入れてトイレの水を流すなどしていた。水道水はまだ白く濁っているが「トイレに使えるだけでもすごく楽になった」。妻の美津子さん(65)は「蛇口から水が出たときは思わず拍手した。水のありがたみを実感した」としみじみ話した。

 「これでやっと気兼ねなく洗濯ができる」と喜ぶのは、同じ脇地区の60代主婦。これまでは洗濯や風呂に入るために、30分ほどかけて市中心部の親類宅やコインランドリーまで出かけていた。18日朝に早速たまっていた洗濯物を洗って車庫に干し「これでようやく日常が戻ってきた感じ」と胸をなで下ろした。

 脇地区の南にある中波地区も、飲用はできない状況だが、住民は通水にほっとした様子。中波自治会の田中千弘会長(71)は、入浴のために市内外の温浴施設へ出かけていたとし「不自由な思いをしたが、徐々に普段の生活に戻りつつあり安心している」とする一方、濁っていて飲めない水が「数日のうちに飲めるようになってほしい」と願った。

 県によると、市内では飲料水としては使えない世帯が、依然として700戸ある。完全復旧とはいかない状況に、林正之市長は「通水したことで漏水箇所が分かるようになった。それを修復し、2、3日あればきれいな水になるのではないか」と説明。市は復旧を急ぎつつ、引き続き市内6カ所に給水所を設けて対応する。

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