佐賀市と佐賀県「デジ田甲子園」本選へ 地域課題解決へ「スーパーアプリ」、営農技術伝承システム 2月18日までインターネット投票

本選出場を決めた佐賀市公式スーパーアプリをPRする坂井英隆市長=佐賀市役所

 地域課題の解決に向けた自治体や企業などのデジタル技術活用を競う「デジ田(でん)甲子園2023」の本選に、佐賀県内から佐賀市の「公式スーパーアプリ」と熟練農家の技術を次世代につなげる県の事業が選ばれた。17日から2月18日まで全国で実施しているインターネット投票と審査委員会の審査を経て、全国1位の内閣総理大臣賞が決まる。

 「デジタル田園都市国家構想」の実現に向けて内閣官房が主催し、2度目となる今回は地方公共団体97件、民間企業などから143件が応募。それぞれ25件、30件が本選出場を決めた。

 スーパーアプリは多様な機能やサービスを搭載した統合的なアプリ。佐賀市が昨年6月に運用を始めた市民向けアプリは、ごみの収集日に合わせて通知が来たり、図書館ミニアプリでは本の予約や貸し出し状況の確認ができたりする。昨年秋には、災害時に避難所で提示することで名簿記入を簡略化できるデジタル版の「佐賀市民証」の発行も始めた。

 「日本一便利な田舎」を目指す市は、アプリが中核的な役割を担うと期待する。1月9日時点で「想定を上回る」(市DX推進課)3万7533件のダウンロードがあり、利用者が拡大している。DX推進課によると、予選では「住民・企業参加型のデジタル社会形成」「地域社会活性化」の取り組みが評価されたという。

 県は熟練農家の技をタブレット端末に詰め込み、次世代に伝える学習システムを導入している。農家の高齢化に伴い、優れた営農技術が失われないよう「匠たくみの技」をデジタル化した。22年度からタブレットを使った研修を始め、これまでに延べ290人が活用。数年で県内トップクラスの収量を上げる若手も登場するなど産地の維持、拡大に一役買っている。

 キュウリ栽培歴約50年の山口仁司さん(72)=武雄市=がデジタル教材の講師を務め、「栽培は年2回しか経験できないが、何度も見直して復習できる」「動画や写真が多く分かりやすい」と短期間で技術が習得できると好評だ。

 山口さんは「自分も教えてもらって今がある。農業自体が厳しい状況だが、技術を公開することで若い人たちが伸びてくれれば、好循環が生まれるかもしれない」とデジタル技術との融合に佐賀県農業の未来を託す。(川﨑久美子、栗林賢)

佐賀県が開発した「匠の技伝承システム」。デジタル化した熟練農家の技術をタブレット端末で学ぶことができる

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