被災地へ寄付「ふるさと納税」で検索結果上位も“偽サイト”の巧妙手口…災害時「人の善意に付け込む」サイバー犯罪の実態

オンラインには人の“善意”に付け込み、お金や個人情報を騙し取ろうとする人が「あふれている」という…(mapo / PIXTA)

1月1日に発生した能登半島地震に関連して、災害に便乗した「悪質商法」や、被災地での空き巣や窃盗などの「火事場泥棒」への注意喚起が多くなされているが、被災地以外でも、災害に便乗した“サイバー犯罪”に気を付ける必要があるという。

「この度の能登半島地震では、X(旧Twitter)上で被災者になりすまし、偽の被害状況を投稿、キャッシュレス決済アプリ『PayPay(ペイペイ)』などで募金と称して送金を募る『被災者詐欺』と呼べるような行為が多数確認されています」

こう語るのは、サイバーセキュリティ製品・サービスの開発販売を行う「トレンドマイクロ株式会社」広報グループの成田直翔氏だ。

個人間での詐欺が急増

東日本大震災以前から日本国内外での「災害時のサイバー犯罪」動向に目を光らせていた同社。これまでの震災では、義援金の募集を呼び掛ける偽サイト(詐欺を行うサイトや、個人情報収集を目的としたフィッシングサイトなど)が作成されるなど、組織的な詐欺行為が目立っていたという。

しかし近年、「個人間での送金が容易にできるアプリが一般に普及したがゆえに、新しい手法の詐欺行為が急激に増加しました」と成田氏は指摘する。

「犯罪者にとっては、これまでのようにフィッシングサイト等を用意する必要がありません。詐欺行為自体が容易になりお金をだまし取りやすい状況になってしまっています」(成田氏)

なお、“被災者詐欺”行為の増加を受けて、PayPay株式会社は1月5日、ホームページ上で「見知らぬ人との残高のやり取りをせず、支援にあたっては相手を十分に確認し、確認できない場合や少しでも怪しい場合は取引をしないでください」と注意を呼びかける通知を行った。

PayPayからの注意喚起(PayPay株式会社ホームページより)

「ふるさと納税で寄付」にも潜むワナ

また、今回の災害では通常の寄付の他、「ふるさと納税」として被災地に寄付金を送る人も多く見られ話題となっている。成田氏はこのムーブメントに対しても懸念があるという。

「『ふるさと納税』のサイトを騙った偽サイトは過去に出現しており、災害を受けてまた出てくる可能性があると考えています。

偽の『ふるさと納税』サイト(画像提供:トレンドマイクロ)

さらに、近年偽サイトを運営する詐欺師が検索結果のスポンサー枠を購入するケースも目立っており、詐欺被害が広がる可能性を懸念しています」(成田氏)

スポンサー枠とは、「検索連動型広告(リスティング広告)」と呼ばれる広告枠のことだ。たとえば詐欺師が「ふるさと納税」というキーワードの広告枠を購入すると、ユーザーが「ふるさと納税」と検索した際に、正規のサイトよりも上部に表示される。

最近では「ディズニーランド」の広告枠が詐欺師によって購入され、スポンサー枠で表示されたケースもある。公式サイトよりも上部に表示されたことで、ディズニーランドのチケットを購入しようとした人がだまされた事例もあったという。

「スポンサー」として上部に表示された「ディズニーチケット」サイトは偽サイト(画像提供:トレンドマイクロ)

成田氏はスポンサー枠について、「送金アプリと同様、犯罪者からすれば“いいツール”です」と話し、こう続ける。

「スポンサー枠を購入する元手があれば誰でも簡単にできてしまう。こうした詐欺がなくならないということは、広告を出すだけの見返りがあるということ。今後『ふるさと納税』や『義援金』と検索した人を狙う詐欺が起こり、最悪の場合はだまされてしまう人も出てくると思います」(成田氏)

オンライン「人の善意につけこむ人」あふれている

被害に遭う心配がある人は、「検索結果のスポンサー枠を認識されていない人」や「『ふるさと納税』と検索して一番上に出てきたサイトをこだわりなく使う人」だという。それらを注意した上で、「ふるさと納税での寄付を考えている方は、『スポンサー枠』のワナには気を付けて、公式サイトから寄付するようにしてください」と成田氏はアドバイスする。

同様に、直接被災地に支援金を送りたい、寄付したいという人は「石川県などの自治体や、日本赤十字社といった信頼できる組織に支援金を送るのがベスト」(成田氏)だという。

最後に成田氏は、純粋な支援の気持ちで被災地への寄付を希望する人に対して、「オンラインには、被害者を助けたいという人の“善意”に付け込んで、お金や個人情報を騙し取ろうとする人があふれているということを知っていただきたいです」と再度注意喚起を行った。

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