能登地震 富山・氷見の鮮魚店支援 茨城・笠間のうなぎ店 寒ブリ購入し恩返し

富山県氷見市の鮮魚店から届いた「氷見の寒ブリ」を持つ馬場万作さん=笠間市笠間

茨城県笠間市のうなぎ店「うなぎ量深(りょうしん)」の店主、馬場万作さん(51)が、15年来の取引があり、能登半島地震で被災した富山県氷見市の鮮魚店から、氷見名産の寒ブリを購入し、来店客に本場の味を味わってもらうことによる支援活動を始めた。鮮魚店には2011年3月の東日本大震災で自らの店が被災した際、支援してもらっていたため、その恩返しという。

1日に発生した同地震で、氷見市は震度5強を観測。全壊が16棟など家屋の被害が200棟以上に上り、断水や道路損壊での通行止めなども続いている。

馬場さんが支援をするのは、同市北大町で夫婦と息子、従業員1人で営む「与一郎鮮魚店」。08年ごろからの魚の仕入れ先の一つで、今も取引がある。「東日本大震災でつらい時に、魚を無料で送ってくれたり、3本注文すると10本くらい入れてくれたりしてくれて、勇気づけられた」と恩義を感じていた。

地震が起き、心配になって電話をかけてみると、同店の経営者、中村力夫さん(74)から「いやあ、ありがとう」という声が返ってきた。馬場さんはこの声を聞いて支援を決めた。

富山湾の氷見沖で年末年始に水揚げされる寒ブリは、身が引き締まり、脂が乗った「氷見の寒ブリ」としてブランド魚。地元の協議会が行う「ひみ寒ぶり」期間の開始宣言は、今季は昨年12月23日と過去3番目に遅かったものの、水揚げは順調でむしろ豊漁という。

氷見-笠間間は約500キロあるが、トラックでの産地直送で、氷見で午後3時ごろまでに発送手続きをすれば、翌日午前9時には笠間に届く。

馬場さんは、輸送体制に支障がないことから、氷見の象徴である「寒ブリ」を買い取って、支援することで、13年前の恩返しを果たすとともに、この機会に笠間近辺の地元の人たちに「本物の味」を味わってもらうことを考えた。

同鮮魚店には、送料込みで1本4万円ほどの値が付く10キロ超サイズの寒ブリを注文。

馬場さんは、自腹を切る覚悟で「ウナギを食べに来たお客さんに、刺し身として無償で提供し味わってもらう。また刺し身やしゃぶしゃぶ用などの切り身にして、値段を抑えて店頭販売もする」つもりだ。

馬場さんは「支援を1カ月は続けたい」と期する。

同鮮魚店は、寒ブリが水揚げされる氷見漁港から1キロほどの県道沿いにある。中村さんは「近所にはつぶれてしまった建物もある。うちはおかげさまでテレビや茶わんが割れた程度で、店は開けている」と話し、馬場さんの支援について「ありがたく、感謝している」と述べた。

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