今週は季節外れの暑さ ムーチービーサ(鬼餅行事の頃の寒さ)は来週24日前後に 

 

 沖縄には寒さを表現する言葉が多くあります。これまで旧暦の11月の「ふいご祭り」の頃の寒さ“フーチェビーサ”や冬至の頃の寒さ“トゥンジービーサ”を紹介してきました。今回は「ムーチー」の頃の寒さ、“ムーチービーサ”をご紹介します。

気候を生かした餅作り

 ムーチー(カーサムーチー、鬼餅とも呼ばれます)とは、月桃の葉で包んで蒸した餅のことで、旧暦の12月8日にお供えをし、家族の健康を祈願します。昔は餅を一つずつ紐で結び、寒風に当てることで日持ちを良くしていました。この時期の気候を上手に生かした先人の知恵や工夫を感じます。

サンニン(月桃)の葉の香りが漂う中、忙しそうにムーチーを作る職人=1月17日、那覇市・末廣製菓(金城健太撮影)

 私自身は幼稚園でのムーチー作りが最初の記憶なのですが、ムーチーは沖縄県民、うちなーんちゅにとって習慣化している行事の一つで、今年は新暦の1月18日(木)がムーチーです。

ムーチービーサは沖縄ではポピュラー

 ムーチーの頃は強い寒波の影響を受ける時期と重なり、沖縄では昔からこの頃の寒さを“ムーチービーサ”と表現しています。“トゥンジービーサ”同様に、ポピュラーなビーサ(寒さ)となっています。

ビーサカレンダー。ムーチーの行事の頃の寒さをムーチ―ビーサという(筆者作成)

最も寒い時期は 気温とビーサの関係

 いろいろなビーサがありますが、どのビーサが最も寒いのでしょうか。ビーサカレンダーと那覇の最低気温の平年値のグラフを重ねて、気温のデータを見てみましょう。那覇で最も気温が低い時期は1月下旬で14.5℃となっています。ちょうど“ムーチービーサ”の頃と重なることが分かりました。

最低気温の平年値(那覇)とビーサの関係(筆者作成)

 また、12月下旬の冬至の頃は最低気温の平年値が15.7℃であるのに対し、2月上旬の立春の頃は最低気温の平年値が14.6℃となっています。冬至の頃の寒さ“トゥンジービーサ”よりも立春の頃の寒さ“ハルビーサ”の方が気温が低いのです。

2月4日(日)にかけての那覇の天気と気温の予想 ※1月19日(金)午前11時、ウェザーマップ発表

季節外れの暑さから…

 今週は各地で25℃以上の季節外れの暑さとなりましたが、1月20日(土)の大寒の頃から日ごとに気温が下がり、来週24日(水)前後がこの時期の寒さ、ムーチーのビーサとなりそうです。日ごとの気温の変化にお気を付けください。また、重ね着などの寒さへの備えをお願いします。

今週末は前線の影響を受ける 雨のち北風

 20日(土)は前線の影響を受けるため、沖縄本島地方と先島諸島は曇りの時間が長く、一時的に雨が降る見通しです。大東島地方は高気圧に覆われておおむね晴れるでしょう。

沖縄本島地方・大東島地方の予報 ※1月19日(金)午前11時、ウェザーマップ発表
宮古島地方・八重山地方の予報 ※1月19日(金)午前11時、ウェザーマップ発表

 21日(日)は、沖縄本島地方と先島諸島は午後には雨がやむ見込みですが、大東島地方でひと雨降りそうです。
 県内各地で雨の後は北風が強まりますので、強風にご注意ください。

雨のタイミング

 今回の雨雲はばらつきがあるため、雨のタイミングが2回ありそうです。沖縄本島地方と先島諸島では、1回目は20日(土)の正午前後、2回目は21日(日)の午前6時前後の見込みです。どちらも長く続く雨の降り方ではなさそうですので、お出かけなどは雨の降り出しのタイミングを意識しながら行動すると良さそうです。

雨と風の予想㊤1月20日(土)正午㊦1月21日(日)午前6時 ※1月19日(金)午前11時現在、ウェザーマップ

崎濱綾子
気象予報士/防災士(株式会社ウェザーマップ)
 沖縄県宜野湾市生まれ。ミスはごろもとして地元の観光大使を務める。RBC琉球放送でラジオ・テレビのリポーター、QAB琉球朝日放送で気象キャスターを担当。2005年に沖縄初の女性気象予報士となる。2005~2016年3月までRBC琉球放送の夕方のニュース番組で月~金曜日の気象キャスターを担当。2016年4月から東京の本社で勤務。Yahoo!ニュース動画出演・記事執筆を担当。Yahoo!ニュースエキスパート。好きな天気現象は、夏至南風(カーチーベー)。

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