トイレを我慢すると菌が尿道を逆流し感染症に 水分を控えると心筋梗塞や脳梗塞の危険も 災害時に役立つ「トイレトレーラー」

地震発生から19日目。復旧・復興の道のりはいまだ険しい状況です。石川県では広い範囲で断水が続き深刻な「トイレ」問題が起きています。

能登半島地震の被災地では断水がつづき、避難所などのトイレの問題が深刻になっている所も。

珠洲市にある避難所では支援に入っている看護師らが、トイレの汚物を除去しています。

流せないままトイレを使い続け、放置されていたのだと言います。

こうしたことから今回、愛知県阿久比町の「災害用トイレトレーラー」が石川県の要請を受けて輪島市の避難所に向かうことが決定。

19日午後に出発式を行いました。

(阿久比町・田中清高町長)
「トイレ事情も非常に厳しい環境ということなので、阿久比町からもトイレトレーラーの輸送をよろしくお願いします」

その輪島市をはじめ、石川県内をこれまで取材した記者は…

(10日~12日 輪島市を取材 畑中大樹記者)
「(用を足した後)トイレットペーパーをふたのように覆い被せて処理がされていた。どうしてもあまりトイレに行きたくないと(私自身も)飲む水分量を減らしていた」

(10日~13日 輪島・珠洲・七尾市などを取材 大野和之記者)
「仮設トイレも設置されつつあるが水が出ないものも多く、雨水をためたものを自分たちで補給して、なんとかトイレの水を確保しようと努力していた」

この水洗トイレは、災害時の利用を想定して設計されていて、車でけん引して必要とされる場所へ移動が可能。目的地に到着した後はすぐに使えます。

阿久比町は、去年3月にこのトイレトレーラーを導入。20日午前6時に初めての県外、輪島市に向けて出動します。

(阿久比町防災交通課・西永秀行課長)
「おそらく衛生的にトイレを使えていない状況が続いていると思う。快適なトイレを使っていただき少しでもフレッシュしていただければ」

トレーラーの全長は約6メートル、3部屋の個室トイレを備えています。中に入ってみると…

1000~1200回の使用が可能な「トイレトレーラー」の内部は

(平野菫記者)
「大人一人が入っても余裕のある広さで、上には電気もついているので非常に明るくて、夜間でも安心して利用できそうです」

個室内は照明がつき、便座をあたためる機能もあります。

主にソーラー発電で電力をまかなうことができるため、電気が通っていない場所での利用が可能。

排泄物は満タンにした給水タンクからの水で流した後、汚水タンクにたまる仕組みで、想定では1000回~1200回は使用できるということです。

また、断水している地域でも近くの水源から給水さえできれば長期間の使用が可能です。

仮設トイレの設置やさまざまな形で、トイレの支援は必要とされています。

愛知県の自治体では刈谷市が、1月12日からトイレトレーラーを現地に派遣しています。

(阿久比町・田中清高町長)
「高価なものなので、一つの自治体でたくさん持つというのは難しいが、いろいろな自治体がトイレトレーラーのようなトイレ対策をして、相互に協力し合う体制ができればいいと思う」

1台約2180万円のこのトイレトレーラー。

阿久比町は、国が費用のうち7割を負担する緊急防災減災事業債を活用して購入していました。その背景には…

(阿久比町・田中清高町長)
「南海トラフ地震が発生した場合、阿久比町でも約5000人の避難者が出ることが想定される。トイレを我慢するというストレスを少しでもなくしていただいて、健康被害もにもあわないようにしてほしいとトイレトレーラーを購入した」

トイレを我慢すると体にどんな影響がでる?

ひとごとではない災害時のトイレ問題。今回、災害派遣医療チーム=DMATの一員として、被災地で医療支援を行っている名古屋大学病院の山本尚範医師は。

(名古屋大学病院・山本尚範医師)
「みなさんトイレを忌避してしまう、避けてしまう。トイレを我慢することによるいろいろな弊害が出てくる」

「トイレの我慢は危険だ」と声を大にする山本医師。

(名大病院・山本尚範医師)
「我慢していると菌が尿道を通って逆流してくる。ぼうこう炎など尿路感染症になってしまうことがある」

また、水分摂取を控えるあまり、命の危険に及ぶ場合もあると指摘します。

(名大病院・山本尚範医師)
「脱水になるので、心筋梗塞や脳卒中、脳梗塞など血管が詰まるような病気が起きやすくなる」

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