第4回「地域団体商標」を活用するためのヒント

地域団体商標取得のメリット

今回は、地域団体商標を取得した後の活用についてお話しさせていただきます。

地域団体商標の取得は、地域ブランド化によって目指すべきゴールまでの通過点の一つですが、地域ブランド化を安心して推進するために必要不可欠なツールとなりますので、権利取得のメリットをご理解いただいたうえでご活用いただければと考えます。

権利取得のメリットは、主に3つあります。

以下でそれぞれのメリットについて説明させていただきます。

メリット① 法的効果

1つ目は、法的効果を受けられる点です。

具体的には他者の不正使用に対して民事・刑事の両面から対抗できます。

現在及び将来における侵害行為の差し止めを請求することができる「差し止め請求権」、権利を侵害された場合、侵害者に対して損害賠償を請求できる「損害賠償請求権」、侵害行為によって業務上の信用を回復するのに必要な措置を請求できる「信用回復措置請求権」等の民事措置で対抗できます。

また、悪質な模倣品販売等の権利侵害等は、刑事事件として懲役及び罰金を科すことも可能です。法的効果の最後ですが、通常の商標と同じように、他者に地域団体商標の使用を許諾すること、いわゆるライセンスすることができます。ライセンスにより、大手メーカーとコラボレーションして商品開発を行うなど、多様なブランド戦略に対応することも可能となっています。

メリット② 差別化効果

2つ目は、差別化効果を得られる点です。

地域団体商標として登録されているということは、特許庁によって、一定の地域で有名なブランドであると認められたことになります。地域ブランドとして国に保護されている点、お墨付きをもらったという点をアピールすることで、取引の際の信用力の増大や商品・サービスの訴求力の増大につながります。

また、地域団体商標を取得した地域ブランドのブランド力向上を特許庁としてもサポートしたいと考えています。その思いのもと、特許庁では「地域団体商標マーク」を作成しました。「地域団体商標マーク」は、地域団体商標を取得した権利者やその構成員であれば、無料で使用できます。

メリット③ その他の効果

3つ目は、副次的な効果となりますが、権利者とその構成員だけでなく、地域全体のモチベーションが向上する点です。

具体的な例としては、権利取得後、商標を使用するために組合員になりたいとの申し出が増加した。商標登録証の写しを組合員全員に配布した結果、組合員全員が共通の意識を持って取り組んでいるという一体感と自信が形成され、それに伴い商品の品質の向上にもつながった。登録後、組合内のブランド意識が向上し、不正使用に対しては組合員から「警告をした方がいいのではないか」との声が上がるようになった等があります。

上記以外にも、権利取得時にマスコミに注目される、ふるさと納税の返礼品に選定される等のさまざまなメリットがあると考えます。

どのように活用していくかは、権利取得団体の「地域ブランド戦略」しだいではないのでしょうか。

さて、第5回は、「地域団体商標」活用事例(野菜 or 果物編)についてお話します。

★さらに詳しく知りたい方はこちら!

・2022年度知的財産権制度説明会(実務者向け)

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12. 地域団体商標制度について

https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/chizai_setumeikai_jitsumu.html

寄稿者 特許庁 商標課地域ブランド推進室

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