「紅だーッ！！！！」。カラオケでそう叫ぶのは、綾野剛演じるヤクザの成田狂児。彼には、どうしても歌がうまくなる必要があった。
この映画が公開されると聞いた時、作者のファンである私は期待と不安が半分ずつあった。原作はマンガであり、絶妙にリアルな絵柄とシュールなギャグが持ち味だ。
紙の上でこそ、その魅力は発揮されるように思えた。上映が始まり、綾野が口を開く。そこにいるのは、確かに成田狂児だった。成田は合唱部の中学生、聡美くんに頼み込む。「歌を教えてくれ」と。組主催のカラオケ大会でビリになるのを、どうにか回避したいのだ。
最初は成田にビクつくばかりだった聡美くんが、だんだんと遠慮のない物言いになり、2人はカラオケレッスンを続けるうち、奇妙な絆ができる。原作を知らずとも、何の気負いもなく、サクッと気軽に楽しめるコメディー映画だ。（スターシアターズ・玉城愛鈴）
◇ライカムで上映中
