「控えでいい」? その真意は 広島カープの “ユーティリティープレーヤー” 上本崇司 プロ12年目の本音 自主トレを天谷宗一郎さんが密着取材

広島カープに欠かせないユーティリティープレーヤー・上本崇司 選手の自主トレを、RCC野球解説者の 天谷宗一郎 さんが密着取材しました。

朝9時、広島・福山市にある施設から練習がスタートしました。

広島カープ 上本崇司 選手
「おはようございます」

RCC野球解説者 天谷宗一郎 さん
「きょう一日、よろしくお願いします」

プロ12年目のシーズンを迎える上本選手、今は第1に、シーズンを通してけがをしない体作りに取り組みながら、これまで以上に筋力をつけて強い打球、そして長打を打つためのトレーニングを積んでいます。

内外野全てのポジションを守るだけでなく、ここ一番の打撃や走塁でチームを支える上本選手。小柄な体ながら “小力”があるのは、日々のトレーニングにまじめに取り組んで作り上げられた肉体があってこそです。

淡々とトレーニングをしているので実際、どれだけきついのか、上本選手よりも軽い重りですけれども、わたしも体験しました。

天谷宗一郎 さん
こんなに重かったんですか。ゆらゆらするもん。9」

上本崇司 選手
「9じゃない」

天谷宗一郎 さん
「10」

上本崇司 選手
「まだまだ。6でしょ」

天谷宗一郎 さん
「長い。ヤバい、ヤバい。9、10…」

上本選手もかなりきつそうなトレーニング、ぼくも初めてやったんですけれども1セットが限界でした。

天谷宗一郎 さん
「ウエートは終わりということなんですけど、今からは?」

上本崇司 選手
「今からはほかの場所に行って、ランニングしたり、技術練習をします」

天谷宗一郎 さん
「じゃあ、そこも見せてもらっていいですか?」

上本崇司 選手
「はい。だいじょうぶです」

天谷宗一郎 さん
「よろしくお願いいたします。じゃあ、せーの!」

上本崇司 選手
「(いっしょにジャンプする)」

アドリブにつきあってくれました。トレーニング場から移動したのは、バッティングセンターに併設された室内練習場。人工芝の敷かれたこの施設でもしっかりと体を追い込みます。本当にぐんぐん行くんです。

そして、キャッチボールは、隣りにある河川敷でトレーナーと行っていました。

いいトレーニングができている手応えや体の状態がいいからか、上本選手が練習中、ずっといい表情をしていたのが印象的でした。ずっと笑顔なんです。

そして、室内での守備練習では、わたしもお手伝いをさせていただきました。ノックです。取りにくいボールをわざと打とうとしたんですけど、まあ、グローブに吸い込まれるんです。さすがのグラブさばきでした。

バッティング練習では上本選手の “ある変化” に気づいたので、この後のインタビューで話を聞きました。スイングにヒントがあるんですけれども、わかりますか?

単独で練習している上本選手、このあとも1人、黙々とバットを振り込みました。

天谷宗一郎 さん
「自主トレを一日見せてもらったんですけれども、表情を含めて充実しているなっていうのがすごく伝わってきました。ここまで順調に来ていますか?」

上本崇司 選手
「順調は順調なんですけど、まだちょっと体が痛いところがやっぱり多いので、そこは気をつけながら飛ばしすぎないようにっていうのは意識しています」

天谷宗一郎 さん
「契約更改(のとき)かな。コンディションを重点的にやるっていうふうに言っていたと思うんですけど。ことしが34歳? 体の変化とかって出てきました?」

上本崇司 選手
「34歳です。やっぱり痛くなるか所が多くなるし、疲れが取れないです」

天谷宗一郎 さん
「ああ…。昨年のいろんなユーティリティープレーヤーとしてもそうだし、スタメンで出て、いろんなポジションで体もしんどいだろうし、心もしんどい。その疲れはじゃっかん残っているのかなっていうところはある?」

上本崇司 選手
「全然、残っています。もう全然、取れないです」

天谷宗一郎 さん
「まじ?(疲れが)取り切れない? この自主トレもけっこうハード。ウエートもそうだし、1つひとつの動きをすごく意識して、重い重量であったり、やっているなと思うんですけど、そこの疲労も考えながらやっているってことですか?」

上本崇司 選手
「やっているんですけど…。まだ重量とか、もうちょっと上がってくるし、回数もやっぱり増えるので。あと、ランニング量も増えてくるので、はい」

天谷宗一郎 さん
「昨年までとはたぶん追い込み方が変わってくると思うんですが、そういうことに関しての不安とかは?」

上本崇司 選手
「不安はあるんですけど、でも、やっとかないと。やっぱり後悔したくないので」

天谷宗一郎 さん
「個人的に盗塁(昨季8)が、崇司と一緒にやって崇司のポテンシャルを知っているからこそ、もっと増えてほしいなと。どう? もっと行けたのか」

上本崇司 選手
「全然、行けました」

天谷宗一郎 さん
「ああ、やっぱり。それはやっぱり体調的なコンディション的なものもあった?」

上本崇司 選手
「…もあるんですけど、やっぱりアウトになりたくないので。そこの勇気がなかったっていう部分もあります」

天谷宗一郎 さん
「個人的には20盗塁は行ってほしい」

上本崇司 選手
「(笑)20はちょっと…」

天谷宗一郎 さん
「とりあえず、ことしの目標はぼく、盗塁は2けた行ってほしいなと思って」

上本崇司 選手
「そうですね。試合に出られれば(笑)」

天谷宗一郎 さん
「いつもそう。『控えでいい』っていうふうに言いますけど…」

上本崇司 選手
「いつかはチャンスは巡ってくるので。昨年もそうでしたけど、最初はもう試合にあんまり出られなかったので、『なにくそ』っていう気持ちでずっと待っていました」

天谷宗一郎 さん
「その準備をもう1月からそう考えているってことでしょ」

上本崇司 選手
「いや、もう、そこ。そこしか考えていないです」

天谷宗一郎 さん
「そうか。そこにちょっと今、大きな衝撃を受けた。(現役のとき、)そんなことを考えてもなかったから(笑)」

上本崇司 選手
「(笑)ぼくも最初は考えていなかったです」

天谷宗一郎 さん
「いつぐらいから?」

上本崇司 選手
「5年ぐらい経ちますかね。もう、クビになるかなと思ったときぐらいから、何か変えないといけないなと思って」

天谷宗一郎 さん
「バッティングの方に特化して成績が出た。また、守備の方もやっていきたいっていうふうに言っていましたけど、ワンプレー、ワンプレーの重みは昨年は違いました?」

上本崇司 選手
「守備でエラーをしてしまったりしたら、やっぱりピッチャーにも迷惑かかるので、そこはちょっと、そういう部分も含めて、やっぱりやることをやっとかないと。エラーしたくて、しているんじゃないので。遊んでいてエラーしたら相手も嫌だろうし、そういうところですかね」

天谷宗一郎 さん
「きょう、見せてもらった自主トレの話。ティー(バッティング)をするときに、
前がすごく(スイングが)大きくなった。昨年よりも前が大きくなったなっていう。ポイントを前にしているわけじゃないんだけど、前が大きく見える。何か変えました?」

上本崇司 選手
「やっぱり、体が小さいんですけど長打が打ちたい(笑)」

天谷宗一郎 さん
「いや。だって、きょう、一緒に来ているディレクターが『(ホームラン)2けた行けるんじゃないか』って」

上本崇司 選手
「(笑)それは絶対にないです」

天谷宗一郎 さん
「いや。それぐらい、打球の角度がよかったし…」

上本崇司 選手
「ホームランとかじゃないんですけど、単打ばっかりだとなんか…。もうちょっと2塁打とか3塁打とか、まだ足が動けるときに外野の間を抜いて3塁に行きたいなという」

天谷宗一郎 さん
「ああ。確かにさっきのティーバッティングを見てたら絶対に増えるだろうなと」

天谷宗一郎 さん
「昨年のドラフトで広陵出身の 高太一 投手が入団しました。お会いしたんですか?」

上本崇司 選手
「年末にしました」

天谷宗一郎 さん
「どうでした? ぼくは一度、インタビューさせてもらっているんですけど、好青年っていう印象だったんですけど。あれ? ちょっと違う感じですか」

上本崇司 選手
「いや。ぼくも実はあいさつしかしていなくて、そんなに…、ぼくも人見知りなので、あんまりしゃべれないんですよ、年下でも。なので『こちらこそよろしくお願いします』って(笑)。でも後輩なのでやっぱり、やりやすい環境というか、そういうのは作ってあげたいなと思っています」

天谷宗一郎 さん
「年齢が、まっちゃん(松山竜平・85年組)、アツ(會澤翼・88年組)・アキ(秋山翔吾・88年組)で、タナ・キク(田中広輔・菊池涼介・野村祐輔・90年組)…」

上本崇司 選手
「4番目(90年組)です」

天谷宗一郎 さん
「(年齢的に)4番目になって、今、若い選手が非常に増えている。ただ、昨年を見ると、まだもうひとつ、ベテランにはやっぱりかなわないっていう選手が多い中で『ここ、もったいないな』って思うことがあります?」

上本崇司 選手
「危機感がないですね。若いのでしょうがないんですけど、まだ時間もいっぱいありますし。なんか、そうですね、簡単に1軍に…。こういう言い方をしたら悪いですけど、なんか簡単に1軍に上がれるみたいな雰囲気があるんですよ。もう、エラー1つでもしたら落とされるような時代だったじゃないですか。今、そういうのはないので」

天谷宗一郎 さん
「崇司がたぶん経験しているから余計、そう思うんだよね。昔の3連覇のときなんか、どうやってベンチに入ればいいんだろう…」

上本崇司 選手
「そうですね。あんなの、もう入るすきもなくて、ぼくも “お笑い” で…」

天谷宗一郎 さん
「そんなことはない」

上本崇司 選手
「いや、お笑いで入っていたので。もう、そんなすきなんかなかったです」

天谷宗一郎 さん
「だって新井さんがいて、まっちゃんがいて、(西川)龍馬がいて、バティスタがいて、そのうち2人は代打にいるわけじゃないですか。赤松(真人)さんがいて、
なかなか…」

上本崇司 選手
「そうです。入るところがない」

天谷宗一郎 さん
「だからこそ、『もっと危機感を持って』と。優勝に関しては3連覇をしているけど、あのときとは立場が違うわけだから」

上本崇司 選手
「そうですね」

天谷宗一郎 さん
「今シーズン、こうやりたいという思いを聞かせてもらえますか?」

上本崇司 選手
「個人的には別に…。なればなるので。そんな、なんか欲はあんまりないですし、とにかくやっぱり優勝したいので、それでファンのみなさんが喜んでくれたらいいなと思っています」

天谷宗一郎 さん
「わかりました。ありがとうございます。期待しています。2けた盗塁、2けたホームラン…」

上本崇司 選手
「いや、いや、ホームランは無理です」

天谷宗一郎 さん
「行ける。行ける」

上本崇司 選手
「がんばります。ありがとうございます」

◇ ◇ ◇

RCC野球解説者 天谷宗一郎 さん
本当に実直ですよね。自分の立ち位置っていうのをしっかりと把握したうえで話してくれました。

青山高治 キャスター
上本選手ならではの言葉が聞けた感じです。

天谷宗一郎 さん
本当にいいことを言ってくれました。そして、上本選手が言っていたバッティングをぼくなりに解釈してお伝えしたいんです。ここでインパクトを迎えて、そこで終わるとなると、昨年の上本選手のように外野の前で落ちてしまう打球になるんです。

“前が大きくなる” っていうのは、(インパクトを)1個2個押し込むことによって結果的に前(のスイング)が大きくなるので、打球が(外野の)間を抜けるっていうことになると思うんです。そういうところに取り組んでいるんだと思います。

石田充 アナウンサー
外野の間を抜けて3塁打と…

天谷宗一郎 さん
個人的にはフェンスを越えてほしい(笑)。それぐらい、バッティングの仕上がりはよかったんじゃないかと。

青山高治 キャスター
また、“4番・上本” が見られるかもしれない。

天谷宗一郎 さん
全然、見られると思います。

石田充 アナウンサー
上本選手、今の若手に “危機感” を持ってほしいと…

天谷宗一郎 さん
けっこう、あそこまでズバッというのは難しいと思うんです。ためらってしまう。けど、やっぱり、いろんなことを知ってほしいから。自分も経験してきたからこその言葉だと思うので、本当に今のカープ、“教科書” と言える選手がたくさんいるなって感じます。秋山(翔吾)選手もそうですし、上本選手も菊池(涼介)選手もそう。みんながいい手本になっています。

石田充 アナウンサー
そういった選手に加えて若鯉のさらなるレベルアップがあれば、6年ぶりの頂点を取り戻すことができるかも知れません。

(RCC「イマナマ!」カーチカチ!テレビより)

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