谷川弥一議員が略式起訴 怒りや失望、長崎県内で交錯… 自民党派閥の裏金問題

谷川氏の事務所が入るビル。時折スタッフが出入りしていた=19日午後4時18分、大村市東三城町

 自民党派閥パーティー裏金問題を巡り谷川弥一衆院議員(82)=長崎3区=が政治資金規正法違反の罪で略式起訴された19日、県内からは「身から出たさび」などと手厳しい声が噴出。他方で、谷川氏に支えられた離島住民らは、議員辞職の意向を知り「力を尽くしてくれたのに」と肩を落とした。
 自民党県連の前田哲也幹事長は「県民の皆さまにご迷惑と政治不信を招き、心からおわび申し上げる。県連一丸となって信頼される政治活動を心がける」とのコメントを出した。
 ある自民県議は「(衆院初当選から)20年間、国とのパイプ役として働いてくれたのに」と言葉少な。谷川氏と距離を置く自民県議は「パーティー券を売れば売るほど裏金が増える仕組みはやはり異常。国会議員としての功績もあるが、結果的に汚点を残した」と言い放った。
 谷川氏はこれまで国境離島新法の創設や食品公害カネミ油症の被害者救済などに携わってきた。谷川氏を長年支援してきた五島市後援会長の中尾剛一さん(87)は「(立件されることが)いまだに信じられない。正直な性格で、自分のためではなく離島振興のため力を尽くしてくれた」と惜しむ。同市の油症被害者、岩村定子さん(74)は「(子や孫の)次世代の救済など大事な課題があり、今後は誰を頼ればいいのか不安が大きい」と話した。
 「投票率が低下している中、政治不信がさらに広がる」。立憲民主党県連の山田朋子代表はこう懸念し、自民党政治刷新本部での議論を念頭に「公選法の連座制を取り入れるなど、政治資金規正法を厳罰化しなければ国民は納得しない」と強調した。共産党県委員会の山下満昭委員長は、自民党派閥の裏金づくりに対し「生活が厳しさを増している国民にとって到底受け入れられない。この立件で終わらせず、政治的な解明が不可欠」と語気を強めた。
 不満を募らせた市民は少なくない。長崎市の小売業の女性(86)は「いくら県のために動いていたとしても(裏金づくりは)やってはいけないこと」と断じ、同市の男性会社員(33)は「昨年末に謝罪した際も、用意した文書を報道陣の前で読み上げるだけで、人ごとのようで態度が悪かった。身から出たさびだ」と話した。対馬市の50代男性会社員は「今後、谷川さんのように離島のことをちゃんと考えてくれる国会議員が出てくるのか」と不安げに語った。

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