「何もかもが魅惑的すぎる一級品」と中瀬ゆかりが太鼓判、エマ・ストーンの怪演光る映画「哀れなるものたち」

TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月~金曜 17:00~)。2023年12月21日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

【"中瀬親方”による2023年12月のおすすめ作品】

◆関脇
コミックエッセイ「くらべて、けみして 校閲部の九重さん」
著 こいしゆうか(新潮社)

新潮社が誇る異能の校閲(こうえつ)集団の実話をもとに本作りの裏方の世界を描いたお仕事コミック。

校閲とは、文章の誤植がないか、内容が事実と相違ないか一文字一文字確認する本作りには欠かせない作業のこと。本作は、校閲に従事している主人公・九重(くじゅう)さんを通して、校閲者が対峙するリアルな日常を描いたコミックエッセイ。

中瀬親方のコメント「(校閲は)間違いがなくて当たり前という縁の下の力持ち的な仕事なんです。本作は私が所属する新潮社の校閲部がモデルで、知られざる校閲という仕事の実態が事細かに描かれています。

そんな言葉の職人である校閲者たちが、作者が紡ぎ出す表現とどう向き合うのか。作家は自分なりの言葉遣いなど、この言葉ってこういう読み方をするんですかというような新しい日本語の地平を開いてくるんです。それが間違いと言えるのかどうかみたいな、その表現とどう向き合ってどれだけの苦悩と迷いを経て指摘の鉛筆を入れているか。その舞台裏がめちゃくちゃ面白いです。

例えば、『○月○日は満月だった』という記述があると、『この日は満月ではありません』という指摘をしたり、作家のために古本屋を巡って古い地図を手に入れて、当時のルートを解析してシーンを書き直させたり、変態的としか言いようのない細かさで本の裏方の世界を描いた、読書好き、お仕事小説大好き人間必見の1冊です。

私も初めて知るような震える校閲のエピソードがてんこ盛りで、めちゃくちゃ楽しみながら勉強になりました。読み終わった後に得した気分になるような面白いコミックエッセイです」

◆大関
小説「パッキパキ北京」
著 綿矢りさ(集英社)

物語は「人生エンジョイ勢」を極める超ポジティブな主人公・菖蒲(アヤメ)が、コロナ禍の中国・北京で単身赴任をしている夫からの同居の誘いを受けて、北京に渡ることに。

北京での暮らしは、欲望の赴くままに遊び回る、まさに"貪欲駐妻ライフ”。そんな彼女の北京での生活をエッセイ風に綴った一気読み必至の痛快フィールドワーク小説。

中瀬親方のコメント「元ホステスの主人公・菖蒲が女友達と話すシーンから(物語に)入るんですけど、お互いにマウントを取り合うさまにまず爆笑しました。

綿矢さん自身が中国で観察してきたことを書いたと思うんですけど、菖蒲が観察眼を持ってパワフルに突き進みながら北京の魅力ととんでもなさと、面白いエネルギーの塊みたいなことを書いているんです。

菖蒲はいわゆる人生エンジョイ勢で身近に居たらあまり関わりたくないようなタイプで読み始めのときは『嫌だわ、この人……』と思っていたんですけど、読み進めていくとどこかスッキリしてうらやましさすら感じてしまって、(彼女の人となりが)めちゃくちゃ魅力的に書かれています。

ラストがすごく痛快で、北京生活の果てに菖蒲がたどり着いた究極の人生戦術が書いてあるんですけど、ちゃんと伏線もあって最後はめちゃくちゃ笑わせてもらいました。気がつけば元気がチャージされていて、読んで得したなと思える1冊でした」

◆横綱
映画「哀れなるものたち」
1月26日(金)より全国ロードショー

物語の舞台は、19世紀末のスコットランド。ある日、不幸な若き女性・ベラ(エマ・ストーン)は自ら命を絶ってしまうも、天才外科医・バクスター(ウィレム・デフォー)によって胎児の脳を移植され、奇跡的に蘇生する。

成熟した肉体と無垢な精神を手に入れて、新たな人生が動き出したベラ。やがて彼女は、世界の真実を知るため、大陸横断の旅に出ることに。ベラの純粋な瞳には、世界はどう映るのか――そして、彼女が知った真実とは?

中瀬親方のコメント「とにかく(主演の)エマ・ストーンの怪演が一級品です。エマ・ストーン演じる主人公のベラは、胎児の脳を移植されているので、(体は大人だけれども)頭脳は0歳から始まっていて精神的に未熟で分からないことだらけで、成長していくにつれて好奇心も出てきて世界をどんどん見たくなるわけです。

ベラはすごく美しいので、男性たちに性的にもいろいろな意味でも搾取されてしまうんですけれども、彼女は成長するにつれてちゃんと自分らしさを手に入れていくんです。

エマ・ストーンはベラという難しい役どころを、よくここまで演じ切ったなと思います。ヨルゴス・ランティモス監督のぶっ飛んだ世界観にぶっ飛んだブラックユーモア、ぶっ飛んだR-18シーンから何もかもが魅惑的すぎる一級品で、ウィレム・デフォーはじめ、(ダンカン・ウェダーバーン役の)マーク・ラファロなど、脇を固める男性俳優陣の怪演も必見です。ヨルゴス・ランティモスワールドに酔いしれてみてください」

中瀬さんが推す3作品、ぜひチェックしてみてください! 毎月最終木曜日に発表するこのコーナー、次回1月のエンタメ番付は、1月25日(木)にお届けする予定です。お楽しみに。

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<番組概要>
番組名:5時に夢中!
放送日時:毎週月~金 17:00~18:00 <TOKYO MX1>
「エムキャス」でも同時配信(地上波放送エリアを除く)
メインMC:垣花正(月~金)
アシスタントMC:大橋未歩(月~木)、ミッツ・マングローブ(金)
番組Webサイト: https://s.mxtv.jp/goji/
番組X(旧Twitter): @gojimu
番組Facebook:https://www.facebook.com/5jinimuchuu

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