歌で誰かの心を前向きに 動画サイトで人気のバイリンガルシンガー 高校1年の投稿が転機に

[おきなわZ世代の肖像 新時代ひらく若者たち](1)

 心を揺さぶる力強い歌詞と、ハスキーで温かみのある歌声。グレース・アイミさん(23)は、バイリンガルのZ世代シンガー・ソングライターとして注目されている。

 米国人の父と日本人の母の間に浦添市の米軍キャンプ・キンザー内で生まれた。3歳ごろまで沖縄で過ごした後、父の転勤で6歳までは米国で。その後、家族の意向で沖縄に戻り、県内の小中学校、高校を卒業した。

 「音楽がない日は一日もない」と言うほど、幼い頃から日常には音楽があふれていた。

 祖父母はクラシックやカントリー、父はロック、母はレゲエやソウルを好んでいたことから、自然とさまざまなジャンルの楽曲を聴き、歌うことが大好きになった。

 「家でもずっと音楽が流れていた。落ち込んだ時は両親がドライブに連れて行ってくれて、車の中で全力で歌う。親戚が家に来ればタレントショーごっこをして遊んだ」と笑顔で振り返る。

 シンガーを志す転機となったのは、高校1年の時に2歳下の弟ゲイブさんと始めた動画サイト「ユーチューブ」への投稿だ。ゲイブさんが弾くウクレレの音に合わせて車内で歌う。豊かな表現力で聴かせるカバー曲が交流サイト(SNS)で人気となり、チャンネル登録者数は10万人超え、累計再生数は1千万回以上を記録。「元気をもらいました」という視聴者からのコメントに、「歌うことで誰かの気持ちをポジティブにさせることができる」と実感した。

 日記を書くことも日常の一つだった。高校2年の時、授業中に書いていた日記のフレーズをうまく並べ替えると歌詞っぽくなることに気付き、作詞する楽しさを覚えた。高校3年で周りが進学や就職を考える中、自らの道を踏み出した。(社会部・垣花きらら)

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 1990年代後半~2010年前後に生まれた「Z世代」。インターネットやデジタルが当たり前の環境で育った若者たちは、どんな価値観を持ち、どんな展望を描いているのか。沖縄のZ世代に迫る。

「ウチナーンチュとして海外で羽ばたきたい」と語るグレース・アイミさん=4日、沖縄タイムス社

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