“天使のような少女” 小児がんと闘いながらも周囲に笑顔咲かせ 12歳で生涯を終えた少女の短くも懸命に生きた姿を銀幕に描いて

小児がんと闘いながら、周囲を明るくさせた女の子が、広島県福山市にいました。その女の子をモデルにした映画が完成し、1月26日から福山市を封切りに、全国で上映されます。

モデルになった女の子は、森上翔華(もりかみ・しょうか)さん。小学校の卒業式を迎えることなく、2019年、12歳で短い生涯を終えました。福山市にある翔華さんの実家を訪ねました。

「卒業式には絶対でるって治療がんばっていたんだけど…」。父親の 森上弘典 さんです。翔華さんの出席がかなわなかった卒業式の映像を見せてくれました。

森上弘典 さん
「わたしらもどんな状態で卒業式をしてんのか分からなかったんだけど、わたしらも参加してくれっということで、一緒にさせてもらったんですけど、すごいもう、涙が止まらなかったですね」

この卒業式の約2か月前に翔華さんは亡くなりました。翔華さんは、5歳の時に小児がんを発症しました。左脚のふくらはぎに腫瘍ができ、手術をしても体のいたるところへ転移をする状態だったといいます。

病気と闘ってきた翔華さんでしたが、多くの人を励まし、元気にしてきた「天使」のような女の子でもありました。

同級生たちは、翔華さんと一緒に卒業式を迎えたいと、森上さんから翔華さんの写真を借りて、一緒に式に臨みました。

森上弘典 さん
「学校に行っている期間って少なかったけど、でもちょこちょこ行っている一日一日がものすごい、みんなには印象的というか、友情って深まったと思うし、だからこそ、一緒に卒業式をしたい、迎えたいという気持ちだから」

森上さんには印象的な場面があったと言います。式で、「森上翔華」と呼ばれると生徒たちが一緒に「はい」と返事をしました。

森上弘典 さん
「これも先生が考えたのではなく、生徒たちで一緒にみんなで声を出して、返事をしようという、生徒からの意見だったらしいです。元気でね、一緒にみんなとここへ立ってね、一緒に卒業証書をね、もらったりできたのに…」

がんと闘いながらも懸命に生きた姿を…

がんと闘いながら懸命にそして、いきいきと生きた翔華さんの人生を多くの人に知ってもらおうと、2022年、映画の制作へ向けた撮影が福山市や神石高原町、関東で行われました。

映画のタイトルは、「神さま待って!お花が咲くから」。

翔華さんが小学校へ登校できた6年生の1年間をフィクションを交えながら描いています。映画では翔華さん役を演じたのは、新倉聖菜(にいくら・せいな)さん…。親友役には、翔華さんの本当の親友であるモデルの夢空(むく)さんが、本人役として出演しました。

森上さんも卒業式のシーンに別の保護者として出席しています。映画では、入院していた翔華さんが6年生に進級し、学校へ登校してみると、自信を失った担任の先生やまとまりのないクラスを目の当たりにします。

翔華さんの持ち前の明るさで多くの人たちの心を変えていくというストーリーです。

森上弘典 さん
「病院生活でちょっと外泊とかまあ、そういうことがあった時には学校に行きますけど、生徒たちがだーっと迎えにきて、カバンとかいろんなものを『わたしが持つ』『わたしが持つ』、みんなが持つと言って。そこでも人気者だったんだなって」

森上弘典 さん
「これなんか特に踊っている姿なんですよね。ピンクの服を着ている。これなんかもカツラをかぶって、ああいう振りを付けたりだとか、明るい子だったので病院に行っても人気者」

福山放送局 内田博文 記者
「(翔華さんの)同級生のみなさんにとっても、ご家族にとってもこれから翔華さんはどういうふうに見守ってくれている?」

森上弘典 さん
「(映画で親友役の)夢空ちゃんもよく言うけど『翔華ちゃんに見守ってもらっているからがんばっていけるんだ』って。だから、この映画でも見ていただいた方が、いろんなことがあると思いますけど、前向きに生きているような映画じゃないかなと思う。笑顔でとにかく生きてもらえれば、翔華ももちろん喜ぶ」

自宅の庭には翔華さんが育てていた秋のバラが咲いていました。

「翔華も喜んでいる」映画が完成 全国公開へ

映画の完成披露プレミア上映会を翌日に控えた2023年11月24日。翔華さんの親友だった夢空さんが福山市役所を訪れました。

福山市 枝広直幹 市長
「夢空さんは翔華さんの思い出というと、どういう思い出がありますか?」

夢空さん
「一緒に修学旅行へ行ったんですけど、一緒にいろんなところを回ったりして」

夢空さんにとって初めての映画の出演になりました。

夢空さん
「本当に現場も楽しくて、翔ちゃんとの思い出を撮影している時に思い出したりして、初めての映画がこの『神さま待って!お花が咲くから』で本当によかったなって思います。(翔華さんは)毎日、明るくて、元気で。周りの子たちを笑わせてくれる、明るくしてくれるような子でした」

全国上映よりも一足早く福山市で開かれた完成披露上映会。開場前から長い列ができました。翔華さんの短くも多くの人の心に影響を与えた人生は、見に来た人たちにどう映ったのでしょうか。

父親の森上さんの姿もありました。この日初めて映画を見ました。

映画を見た人たち
「命の大切さをすごく感じて、自分は病気とかないんですけど、もしなったらってことを考えると、すごくいい作品だなと感じました」
「いままでも大事に感謝の気持ちを伝えてきてましたけど、もっとこの映画を見たことで、もっと寄り添っていっぱい、親孝行もそうですけど、子どもに対してもいっぱいしてあげたいなと思いました」

森上弘典 さん
「たぶん翔華もこれ(映画)を見ていると思うんですけど、間違いなく今、踊っています。ダンスで喜びを表現していると思います。それぐらい、わたしもうれしいし、翔華もうれしいんじゃないんかなと思います」

映画「神さま待って!お花が咲くから」は、1月26日から福山市内2会場で上映予定で、広島市内でも近日公開予定ということです。

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