「反省ばかりが出た試合」厳しかったイラク戦の敗戦を振り返る森保一監督、その中でも感じた選手の意気「我々の代表の存在意義と活動意義を選手たちが発揮してくれた」

森保一監督は敗戦を悔やむも選手が見せた姿勢を称える[写真:Getty Images]

日本代表の森保一監督が、敗戦に終わったイラク代表戦を振り返った。

19日、アジアカップ2023グループD第2節のイラクvs日本がエデュケーション・シティ・スタジアムで行われ、2-1でイラクが勝利。イラクがグループステージ突破を決めた。

初戦のベトナム代表戦で勝利した日本と、インドネシア代表戦で勝利したイラクの一戦。共に勝利すればグループステージ突破が決定する大事な一戦となった中、イラクが立ち上がりから押し込むことに。5分には左サイドを突破したクロスからアイメン・フセインがヘッドで合わせてイラクが先制する。前半アディショナルタイムには再び左サイドをイラクが仕掛けて、アイメンが2点目もヘッドで決める。

2点をリードされた日本。攻め込むもフィニッシュワークが精度を欠くと、後半アディショナルタイムに遠藤航(リバプール)のゴールで1点を返すも、2-1で日本敗れ痛恨の黒星となった。

森保監督は試合後にメディアの囲み取材に応じ、「もっと力をつけないといけないです」とコメント。「入りから選手もチームもよりアグレッシブにプレーできるように環境づくりをしっかりしなければいけないという反省ばかりが出た試合でした」と語り、試合を振り返った。

「試合については、勝っていくためには入りの部分と、前半も後半も終了間際のところをどうやってコントロールしていくか、プレーの選択をするかというところです」

「1点は仕方ないとしても、2点目の失点が今日の試合には大きく影響したと思いますので、勝つためになんとか1失点したとしても、2失点目をしないで我々が返せるということをやっていくことをしなければいけないです」

「1点目も相手がパワーある中で、早めに点を奪いにくるために圧力をかけてくること、スタジアムの雰囲気にしても我々にとってはアウェイで、彼らにとってはホームのような雰囲気になるなというところで、スタートで勢いに乗せてはいけない事を分かっていた中で、抑え切れずというところは、戦術的なところもそうですけど、相手がやりたい事をしっかり跳ね返すというのは、力をつけないといけないなと思います」

難しい試合になる事は想定されていたが、それでも相手の圧力に屈した日本。特にこの2試合では球際の部分でも前半は負ける場面が多かった。

森保監督は「2つあると思います」と語り、「1つはチームとしての戦術的なハメ方、ディフェンスの行き方で相手の自由を奪う。もう1つは個々のところで、局面で相手にボールがこぼれるシーンはベトナム戦でも散見されたので、チームとして共有しました」とコメント。「今日の試合においても相手が100%、120%、150%ぐらいでくる中で、そこで勝っていく、局面での力をつけなければいけないなというのは、今日の試合でも出たと思います」と、まだまだ力がないと語った。

また、「相手のモチベーションが我々にとってこれまで以上に高く、死に物狂いで戦ってくる中で、そこを上回る力をつけなければいけないというところは、今日の試合でも出ていたので、綺麗に戦術的に勝っていくだけでなく、泥臭くどう勝っていくかというのを、そろそろ身につけないといけないです」とし、強者になる上で通る相手からの対策や警戒、モチベーション高く臨んでくる部分にしっかりと打ち勝つ力を持たなければいけないとした。

この試合では1トップに浅野拓磨(ボーフム)を起用した。その意図については「起点を潰すというのは、FWの選手に求めているので、それだけではなく、彼は代表チームでも結果を出していますし、所属チームでも5大リーグの中でFWとしてドイツで激しく厳しい戦いの中で出続けていて、結果も出している事を評価しなければいけないと思います」とコメント。「年末からはケガ絡みで起用していなかったですが、起用しても良いかなというプレーを練習から見せてくれていましたので起用しました」と、良い状態になったために起用したという。

また、この試合でも日本のサイド攻撃は封じられることに。何度かチャンスを作りながらも、決定的なシーンを作り出す良い時のプレーは少なかった。

「サイドを打開することにおいても、いくつかポイントはあると思いますけど、個で打開する、コンビネーションで崩していくというのがありますが、個の部分では対応されていましたし、普段であればおそらく違う選手が出てくるとこロデベトナム戦もイラク戦も守備が強い選手を起用してくる、2枚使ってくるという戦術的にも相手が対応してきていることがありました」

「我々がサイドに人数をかけて崩していく部分も、ベトナム戦もそうですし、サイドに我々が走れないようにコースの切り方などをかなり研究してきていると思いますので、そこを乗り越えていく個の力の部分もそうですし、チームとしても我々がやろうとすることを止めにきた時に、次の選択肢をトレーニングの中で入れているつもりですが、より試合で出せるような形をオプションとして幅を広げていくことが大事だと思います」

前半は苦しんだ2試合。イラク戦では盛り返せずにそのまま敗れたが、その中でも良い部分がなかったわけではない。

森保監督は「良い部分は、ボール保持はできていたと思います」とコメント。「ワールドカップで言えば、我々はポゼッション率が70%vs30%で勝った中で、我々がボールを握った中で勝っていくということは1つ課題としてやっている中でレベルアップしないといけない」と語り、「今日の試合は握れるところからどうやって最後の崩しに持って行けるところでは、その手前まで大切にしたと思います」と振り返った。

また、最後まで諦めずに1点を返せたことも評価。「追う展開の中でのメンタル的に糸が切れた凧になってチームがバラバラになるのではなく、やり続けて戦っていく事を選手がやってくれた事は大切にしたいですし、1点返して、0-2で終わるのと1-2で終わるのは全く違うと思います」と、チームとして大事にしてきた諦めない姿勢を見せられた事は良かったとした。

加えて、試合に向けての準備やプロセスは問題ないとコメント。応援してくれる人に力を与える結果を残せなかったことを悔やみながらも、諦めない姿勢をは見せられたと語った。

「勝つか負けるかというところでは結果は本当に誰にもわからず神のみぞ知るというところで、プロセスを大事にしていこうとこれまでやってきている中、評価はもちろんあると思いますが、姿勢としてはみんながベストを尽くして試合に向けて準備しています」

「準備段階にしても、試合にしても、最後まで諦めずにチーム一丸となって戦うというところはどんな試合でも我々が結果以外のところで見せていかなければいけない事は、選手たちが大切にしてくれたと思います」

「サポーターの皆さんに勝利と励ましのエールを送る事をいつも考えている中、今年に入って今月の能登半島地震、1月17日の阪神淡路大震災。その2つだけではないですけど、色々な人たちが大変な思いをして生活をしている中、心の痛みを持ちながらも生活している人がいる中、我々が最後まで諦めずに戦い抜くということを大変な思いをしている方々に届けて、感じていただければと思います」

「今日の試合は取れなかったですが、次の試合に生きて、勝って、グループリーグ突破して、最後優勝できた時に我慢がこういう結果に繋がったなと思っていただけるように、選手たちが続けてくれたことは、監督としては勝利は求めていきたいですが、プロセスとしては我々の代表の存在意義と活動意義を選手たちが発揮してくれたと思います」

「試合が終わってからも、5人のトレーニングパートナーが片付け等を手伝ってくれたり、みんながチームのためにっていうところは皆さんに見えないところだと思いますが、我々がただ単にスポーツで勝った負けたではなく、日常生活にどういうことを貢献できるか、社会貢献できるかというのを選手たちも考えてくれたことを伝えたいです」

結果が求められる世界において、負けてしまえば全てが悪かったとされ、価値すら見出さない人も多い中、チームとしてはまた1つ成長に向けたステップを踏んでいる段階。本当に大事なのは、次節のインドネシア代表戦となる。

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