[社説]導水管漏水 老朽化対策急ぐべきだ

 「命の源」であり「産業の血液」ともいわれる水。その大切さを痛感する事態だ。

 県企業局が管理する、名護市の久志浄水場から西原町の西原浄水場に送水する導水管の一部で漏水事故が発生した。

 導水管は設置から48年が経過しており、老朽化による破損が原因とみられている。

 企業局は工業用水の供給を一時停止して修繕を試みたがうまくいっていない。

 県内では先日11ダムの貯水率が6割を切り、沖縄渇水対策連絡協議会が5年半ぶりに県民に節水協力を呼びかけたばかりだ。そうした中の事故は、県民生活に大きな影響を及ぼしている。

 17、18日の修繕工事中には96事業者向けの供給が止められ、食品製造工場や製鉄工場の作業に支障が出た。

 企業局は一時、本島中南部の9市町にも一般家庭向けを含む水道水断水の可能性があると連絡。結局、この時点での断水は回避されたものの、住民生活は混乱を来した。

 今回、漏水事故が発生したのは「基幹管路」と呼ばれる導水管だ。破損は2~3センチとされるが、破損部分からは今も1時間に約10トンの水が漏れ続けているという。

 このまま効果的な対策が施されなければ、再び断水となる恐れがある。

 経年劣化を考えれば、水圧の変化により別の箇所で新たな破損が発生する恐れもあるのではないか。

 老朽化対策を十分にしてこなかった企業局の責任は重い。

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 修繕作業の過程では、水の流れを止める制水弁(バルブ)の一つが、経年劣化によるさびで閉まらなくなっていることも判明した。

 導水管やバルブの点検は年2回実施しているというが、地中に埋まる管の破損を事前に把握することは難しい。

 企業局が管理する管路のうち約40%が法定耐用年数(40年)を過ぎている。全国平均の約20%の倍に当たり、設備の更新を速やかに進めなければならない。

 戦後、米軍統治下にあった県内では復帰後急速にインフラが整備された。復帰から50年が過ぎ、耐用年数を迎える管路が急増している。

 水道管の更新は費用がかさむ。水道事業は原則、利用者の料金で賄っている。県は急激な値上げを避けるため国の沖縄振興一括交付金を当て込む。

 しかし、交付金減額の影響で更新が滞っているという。

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 他にも北部にダムが集中しているため給水原価に占める「動力費」の割合が他県に比べ高いことや、海水淡水化施設などが必要な離島を有するなど高コスト構造が横たわる。

 国には沖縄の特殊事情を考慮した対応を望みたい。

 一方、経年劣化は予測可能だ。県内の更新率は0.35%(全国0.65%)と低い。企業局も優先順位をつけ確実に更新を進めるべきだ。

 水道行政の広域化による効率化を進める必要性もある。インフラのコストを誰がどのように負担するのか。安心安全な水の提供の方策確立は急務である。

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