【桜坂劇場・下地久美子の映画コレ見た?】兎たちの暴走 美しい母娘 悲しみ描く

スクリーンガイド/兎たちの暴走

 美しいもの、美しい人、美しい音楽。映画の中には「美しい」がいっぱい。生活に苦しみ、悲しい事件を起こしてしまった母と娘を描いたこの中国映画は、不幸な母と娘がとにかく美しい。

 黄色いスポーツカーの扉が開き、黄色のピンヒールを履いた細い足がのぞき、真っ白な肌の、ちょっと不幸そうな疲れた美女が姿を現す。その人は、生まれたばかりの娘を捨てて町を出た母親。一方、母に捨てられた後、継母の冷遇に耐える日々を送る実母に似た美しい娘は、毎日汚れた体操着で過ごしている。

 突然現れた実母の都会的な美しさに心酔し、喜びを隠さない娘。母親も自らを慕う娘を慈しむ。

 互いの心の傷を埋め合うように寄り添う2人は、母と娘と言うよりも恋人同士のよう。2人が寄り添うほどに、不幸の気配は濃くなり、そして、事件は起こる。(桜坂劇場・下地久美子)

◇同劇場で20日から

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