千秋の涙から誕生したポケットビスケッツ!勇敢なメッセージソング「Red Angel」  90年代の名曲、ポケビの「Red Angel」を覚えているか?

90年代デビューアーティスト ヒット曲列伝vol.13 ■ポケットビスケッツ「Red Angel」 作詞:CHIAKI&ポケットビスケッツ 作曲:パッパラー河合 編曲:パッパラー河合 発売:1997年1月22日 売上枚数:109.8万枚

1990〜1999年の10年間にデビューし、ヒットを生み出したアーティストの楽曲を当時の時代背景や、ムーブメントとなった事象を深堀しながら紹介していく連載の第13弾。今回は、ポケットビスケッツ「Red Angel」を紹介します。

千秋の涙とウッチャンのアドリブから生まれたポケットビスケッツ

ポケットビスケッツは、日本テレビ系列で放送されたバラエティ番組『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』から誕生したユニットです。

誕生のきっかけは、番組内でウッチャンナンチャンの南原清隆扮する、天才音楽プロデューサー・南々見一也プロデュースで、モデルの高山理衣(りえ)を売り出す「スーパースター誕生!~K・Nanami アジアへの野望〜」という企画が始動し、国生さゆり、室井滋、千秋が招集されたことからはじまります。

そして、高山理衣がセンターポジションに立つ3人組ユニットを結成することになり、国生、室井、千秋の中から2人を選ぶという展開に。そこで南々見は、国生と室井を選出、落選を告げられた千秋は、その場で泣き崩れてしまうというハプニングが起こります。その涙を見た内村光良は、その場の空気を変えるため、とっさの判断で、フジテレビ系列で放送されていた『ウッチャンナンチャンの誰かがやらねば!』で、タレントのちはると演じた人気キャラクターを引き合いに「私が第2のマモー・ミモーを作ってやるダニ」と発言。

ポケットビスケッツの誕生は、千秋の涙とウッチャンのアドリブから ”偶然” 生まれたユニットだったのです。

千秋の流した涙が、大躍進に繋がっていった

千秋はなぜ涙を流したのか?

その背景には、本格的な歌手デビューを目指していた千秋の熱い想いがありました。バラエティ番組の企画とはいえ、夢だった歌手デビューが決まる寸前での落選は悔しくてしかたがなかった。やりきれない気持ちが、涙として溢れたのです。その想いを瞬時に汲み取った、内村光良扮するTERUと、キャイ〜ンのウド鈴木扮するUDOの3人組として動き出したポケットビスケッツは、そこから怒涛の快進撃を続けます。

ファーストシングル「Rapturous Blue」は、高山理衣、国生さゆり、室井滋が結成したユニット、McKee(マッキー)よりもシングルチャートの上位にランクイン、続くセカンドシングル「YELLOW YELLOW HAPPY」は120万枚のミリオンヒットを記録します。ポケットビスケッツが多くに人に支持された要因は、バラエティ番組『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』の中で課せられる ”クリアできなかったら解散” という展開の連続が、視聴者の応援したくなる気持ちを強く掻き立てたこと。

そして、ボーカリスト千秋の力強い歌声が、聴く人へダイレクトに伝わったからです。才能に溺れず努力を重ねてきたことは決して裏切らなかった。悔し涙をバネにして掴んだ夢の歌手デビューの先には、素晴らしい景色が待っていたのです。

アラビア風アレンジと哲学的な歌詞の融合で魅せる「Red Angel」

「YELLOW YELLOW HAPPY」の次にリリースしたサードシングル「Red Angel」は、ポケットビスケッツのシングルで、最もアーティスティックな楽曲です。爆風スランプのギタリストでプロデューサーのパッパラー河合が手掛けた、イントロからアラビア風アレンジのビートがダイナミックに展開していくサウンドに、覚えやすい振付が入るこの曲も売上枚数109万枚とミリオンヒットを記録します。この曲の語る上で欠かせないのは「YELLOW YELLOW HAPPY」の世界観を、より哲学的に描いた千秋の歌詞です。

 この星の ウィルスも少し 壊れ始めて  無機質な 恋愛グラフも 上がり始める

 顔のない 正義の行進 真似てみたけど  ありふれた 常識にはもう うんざりするの

未来を暗示していたのではないかと感じるフレーズがこの曲にはいくつも登場するのですが、そんなミステリアスな雰囲気を醸し出す歌詞の、一番の聴きどころであるサビアタマのフレーズはーー

 赤い風が吹く街  どこまでも駆けてゆけ

涙を流したことがあるボーカリストだからこその求心力が宿ってると思うのは私だけではないでしょう。手軽に自分の気持ちをポストできるようになった時代でも、本当に大切なものは心の中にある。その気持ちを忘れずに、強い想いを持ち続けていれば、きっと結果はついて来るはずです。

夢があるのなら、それに向けてひたすら進め!そこに終わりはないのだから。それでも不安な気持ちになる日がやってきます。そんな時こそ、この曲を聴けばいい。「Red Angel」ラストの歌詞はこう歌います。

なにも恐く なんかないから

カタリベ: 藤田太郎

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