阪神電鉄の車庫の下、二度と倒さない「決意の柱」 阪神・淡路大震災、29年後のまちを歩く

阪神電鉄石屋川車庫の下にある駐車場。太い柱が支えていた=神戸市東灘区御影塚町4

 手元にフィルムカメラのネガがある。神戸新聞本社の倉庫で見つけた。29年前、阪神・淡路大震災直後の光景が切り取られている。

 その中に、阪神電鉄石屋川車庫(神戸市東灘区)を写した1枚があった。車庫は高架で、支柱が折れて崩落し、鉄骨がむき出しになっている。整然と発車を待っていた58両の車両は、衝撃で多くが脱線した。圧倒的なエネルギーの前では、鉄やコンクリートも無力だったと思わされる。

 記録を見ると、撮影者は入社2年目の記者。今は私が所属する映像写真部の部長だ。一方、当時の私は宮城県に暮らす小学生。入社後、取材で出会った人たちに震災の体験を聞かせてもらうようになったけれど、現実の震災は知らない。

 今、まちを歩いて、カメラで長い歳月をたどってみたいと思った。

 石屋川駅で降り、西へ向かう。車庫が見えてきた。当時と変わらない高架で、下はスーパーと駐車場になっている。そこに、車庫を支える太い柱が林立していた。直径1メートル近く、全部で115本ある。耐震性強化のため、1本ずつくいが打ち込まれているという。

 二度と倒さない-。しばらく眺めていると、そうした強い決意が込められた風景に思えてきた。

 外へ出ると日が暮れていた。吐く息が白い。駅前に小さな喫茶店を見つけた。(風斗雅博)

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