障がい児のいざという時どうするか 息子のために「サポートブック」を作った両親 日々の暮らしを発信する父の思いに迫る

障がいをもつ子を育てる親御さんにとって、心配なのは「いざという時どうするか」ということだと思います。たとえば、災害があったり、お父さんやお母さんが体調を崩したりといったときに、子どもがいつものように過ごせるか心配だという人は多いようです。

13歳のそう君は重症心身障がい児です。そう君のお父さんやお母さんは、そう君のためにさまざまな面からサポートをしています。

そう君のご両親(@sou2010k_papa)は、Instagramでそう君との暮らしの様子や、障がい児育児についての情報を発信しています。

今回は、そう君へのサポートやお父さんの気持ちなどについて話を聞きました。

サポートブック

サポートブック(@sou2010k_papaさんより提供)

そう君のご両親は“サポートブック”の販売や“いざという時に使えるリスト”の配布を行っています。

ーサポートブックは、どのようなものなのでしょうか?
サポートブックは、障がいをもつ子どもの自己紹介ができる冊子です。(印刷済みの冊子と無料アプリcanvaで作れるデジタルデータの2種類販売しています)
重複障害がある子が、就園就学や新しい施設を利用するとなったとき、何度も同じ説明をしなければなりません。
サポートブックの内容は緊急時の連絡先、内服薬一覧、てんかん発作時の対応、水分補給や好きなこと・苦手なこと、成育歴、関わっている支援者ネットワーク図など医療的ケア児や重症心身障がい児向けの項目を記入できるようになっています。
文章だけではなく写真付きのサポートブックを作成し、先生や支援者さんへお渡しすることで保護者の説明の手間が減るだけではなく、支援者さんにとっても必要な時に見返すことができ、安心して関わっていただけるというメリットがあります。

サポートブック(@sou2010k_papaさんより提供)

いざという時に使えるリスト

いざという時に使えるリスト(@sou2010k_papaさんより提供)

ーいざという時に使えるリストについても教えてください。
いざという時に使えるリストは、そう君が小学1年生の頃に作った物です。それを、少し手直ししてHP(PDF)やサポートブックストア(canvaで作れるデジタルテンプレート)で無料配布しています。
もしメインで子どもに関わっている人に何かあった時、家族や子どもがいつも通りの生活ができるように普段関わっているサービスなどの連絡先をまとめることができるリストです。
・福祉サービスはどこに連絡するとよいか
・デイサービスやショートステイの連絡先
・リハビリの曜日や担当の先生の名前
・かかりつけ病院・薬局
などが書き込めます。我が家はこれを作ることで、いざという時に備えることができているので、みなさんにも共有したいと思い配布を始めました。

いざという時に使えるリスト(@sou2010k_papaさんより提供)

サポートブックを作ったきっかけ

ーこれらを作ろうと思ったきっかけを教えてください。
サポートブックは、息子が5歳の頃に独特のサインやジェスチャーを使っていたので、日々関わってくださる方に写真付きで紹介しようと思い作り始めました。また、その頃ちょうど新しい児童発達支援施設へ通園も始めたため、それも作るきっかけになりました。
ネットで見かけた、知的や発達の遅れがある子向けに作られたサポートブックを参考に、息子に合うように内容を変更し作りました。

現在、自治体のホームページなどでもサポートブックのテンプレートが配布されています。
しかし、そう君のお父さんによると、重度の障がいをもつ子ども向けとなるとほぼないというのが実態です。そのため、同じ境遇の家族へ向けて、重度の障がいがある子どもたちやそれに関わる方たちがより快適になればと思い、販売を始めたそうです。

HPやYouTube担当のパパ

そう君のご両親はサポートブックについてや日々の暮らしを発信するために「重心っコのくらし」というHPを運営しています。

ー重心っコのくらしでは、HPやYouTubeの担当がパパとのことですが、パパが担当になった経緯を教えてください。
1年前にホームページを立ち上げていたのですが、Instagramの更新やサポートブックストアの準備などで手一杯になってしまい放置していました。そこで、パパにHPの更新を手伝ってとお願いしました。
私が勝手に始めたInstagramでの情報発信ですが、最初の頃から全力で応援してくれていて、感謝しています。
YouTubeチャンネル「重心っコのくらし」はパパが勝手にはじめました(笑)
実は、私よりそう君への愛が強すぎて普段から困るほど愛情深いパパです。そう君の可愛いだけの動画をYouTubeへあげたりするので、ちょこちょこ指摘はしていますが、私はノータッチですべてパパが管理しています。
「バリアフリーモデル住宅へ行ってみた」という回では、その動画を見た方が実際にモデル住宅へ足を運んでくださったことを後で知り感激していました。まだまだフォロワーさんは少ないのですが、自分と同じ境遇の方のお役に立てたことが嬉しいようです。

ーパパはそう君との暮らしの中でどのようなことを担ってくれていますか?
パパは子育てにとても協力的で、そう君の日々のメンタルケア、入浴、遊び相手など私が用事で2日程不在にしても、お料理やそう君のこともなんでもしてくれるので安心して任せられます。
そう君は小さな頃からパパっ子なので「パパがいい〜」といつも言っています。「ママがいい」は数ヶ月に一度言ってくれるかどうかです(笑)。パパは怒ることがほとんどなくて穏やかな性格なので、せっかちで怒るママよりパパのほうが好きなのは仕方ないですね。

パパの気持ち

そう君パパにも話を聞きました。

ーそう君の障がいがわかったときのお気持ちを教えてください。
お腹の中で脳出血を起こしているのを聞いた時はショックでした。当時お医者さんに、生まれてきても自分で呼吸ができないかもしれないという話も聞いていましたが、妻のお腹の中で成長するそう君が愛おしくてたまりませんでした。
生まれてくるそう君に「パパとママのところに生まれてきてよかった!」と思ってもらえるように生きよう、と初めてそう君の顔を見た時に決意しました。

ー現在のそう君との暮らしで、大変なことはなんですか?また、楽しいことについてもお伺いしたいです。
特に大変なことはないです。そう君は自閉症やパニック障害・聴覚過敏があるので、旅行や買い物も行きにくい面はありますが、普通のご家庭と同じように生活しています。強いて言うならこだわりが強いところですかね(笑)毎日普通に生活を送れていることが楽しいですし幸せです。

ーそう君との暮らしを発信するときは、どのようなことを意識して発信していますか?
私たちはそう君を13年間育ててきたことで得た知識を、そのままSNSで情報発信しています。YouTubeはよりリアルな日常をお届けできたらと思い配信を始めました。今後はYouTube LIVEも配信していけたらと思ってます。
全国には13年前の私たちと似たような方たちが少なからずいるんじゃないかと思います。その方たちが悩んだときに、見て参考にしていただけたらとても嬉しく思います。また13年間で変わることもありますので、自分たちも勉強しながら間違った情報を発信しないようにしています。

パパの気持ち(@sou2010k_papaさんより提供)

ー似たような境遇のパパたちに、伝えたいことはありますか?
障がいの受容について聞かれますが「障がいをもって生まれてほしい」と思っている方は勿論少ないと思います。
私も障がいなく生まれてほしいとは思っていました。しかし、どんなことがあっても我が子には変わりないので「どれだけ重い障がいがあってもパパとママの子どもでよかった!」「生まれてきてよかった!」と思ってもらえるように育てようと、そう君と初めて出会った日に思いました。
この先の子育てへの不安がある方もいるかと思いますが、私はゆっくりながらも自分のペースで成長していく息子の姿にほんの些細なことでも幸せを感じます。
他の子と比べずその子を見てあげると子育てを楽しめるのではないかと思っています。

障がいをもつ子を育てる親御さんにとって、そう君のご両親の発信は、さまざまな情報を得られるありがたい存在ですね。サポートブックやいざという時に使えるリストも、多くの人にとって心強い存在となることでしょう。

ほ・とせなNEWS編集部

© 株式会社ゼネラルリンク