ALS患者の「命綱」、手がけたのは高校生 人工呼吸器と電源つなぐケーブル、長さと強さ兼ね備え

ALS患者が使う医療機器向けの電源ケーブルを制作、寄贈する豊岡総合高校の電機応用工学科の生徒ら=豊岡市加広町

 豊岡総合高校(兵庫県豊岡市加広町)電機応用工学科の3年生4人でつくるチームが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの患者向けに、車や蓄電池から人工呼吸器の電源を得るためのケーブルを制作した。災害による停電などで、予備電源も使い切ってしまうような非常時を想定。県豊岡健康福祉事務所や地元の医療機器販売会社と連携し、いざという時の「命綱」を完成させた。(阿部江利)

 同事務所では、人工呼吸器など医療機器を使いながら在宅療養をしている難病患者らについて、万一の連絡先などをまとめた災害対応マニュアルを作成している。電源確保については、機器本体の外部電源と内蔵電源が機能しない場合に備えて予備の蓄電池を用意。いずれも使い切る事態も想定し、車のシガーソケットから電気を得る手段も盛り込んでいる。

 同事務所の保健師、青山純枝さん(53)によると、車から屋内の呼吸器まで電気を送るには長いケーブルが必要だが、市販されていないという。但馬では、電気器具に詳しく、難病患者の家族を看病する70代の男性が他の患者のケーブルを自作してくれていた。しかし、男性も年齢的に制作を続けられない恐れがあるとして、電気を専門に学ぶ同科に協力を打診。生徒の課題研究のテーマとして、ケーブル制作による地域貢献に取り組むことになった。

 制作に挑んだのは、奥地歩夢さん(18)、今井一心さん(18)、榎本陽斗さん(17)、垣谷涼太さん(18)で、西田重喜学科長(52)が指導した。青山さんが同校に赴き、ALSや患者の暮らしを紹介したほか、医療機器販売のマリヤ医科興業(同市寿町)の営業担当で、同校OBの山本裕己さん(46)も出前授業で人工呼吸器の仕組みなどを解説。デモ機を持参し、試運転に立ち会った。

 生徒らによると、医療機器は専用のプラグが必要。車から出力される電圧に耐え、長くケーブルを伸ばしても電圧が下がらないといった条件を満たす必要があった。市販の部品を使い、長さ15~30メートルの8本を仕上げた。雪や雨などの悪天候にも対応できる防水仕様で、1月末にも同事務所に寄贈する。同事務所が今後、必要な患者にケーブルを貸し出す予定。

 車の市場調査などを担った垣谷さんは「医療に関わるものを作る以上、雑な仕事はできないと感じた。自動車を学ぶ学校に進学するが、学びが医療福祉でも役立つと気付いた」と振り返る。チームリーダーの奥地さんは「患者さんの生活を詳しく知り、無事に完成させられたことにほっとしている。実際に使う場面は起きてほしくないが、少しでも安心してもらえるなら作って良かったと思う」と話した。

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