富山県氷見市で水道完全復旧、飲用可能に 能登半島地震3週間、住民安堵

復旧した水道水で野菜を洗う住民=21日午後4時35分ごろ、氷見市中波

 能登半島地震の影響で断水した富山県氷見市の水道が21日、完全復旧した。飲めない水が通っていた世帯が6地区に約470戸あったが、飲用できるようになり、市内全域で断水が解消した。地震発生から22日で3週間。不自由な生活や店の休業を余儀なくされていた市民からは「復旧まで長かったが、安心した」といった声が聞かれた。

 氷見市では、地震後に全域の約1万4千戸で断水した。水道は徐々に復旧したが、脇、中波、姿、中田、論田、熊無の6地区の約470戸は通水後も飲用水として使えない状況だった。

 飲用水として使えるようになり、中波地区のドライブイン・民宿「汐風」の代表、相見良人さん(69)は「一安心した」。妻の自子さん(64)は水道水で野菜の泥を落とし「気兼ねなく料理ができる」と笑顔を見せた。

 汐風は、断水の影響で17日まで営業を取りやめた。通水後は石川県に向かう災害派遣職員が宿泊し、飲み水や食事はペットボトルや給水所の水で対応。相見さんは「水道水が使えなかった期間は長く感じた」と振り返り「自分たちの生活も楽になり、お客さんも受け入れやすくなる」と胸をなで下ろした。

 論田地区で草餅や豆餅を製造している「食彩ふるさと論田加工グループ」も休業していたが、近く再開する。代表の坂下哲夫さん(73)は「水が来て本当にありがたい。こんなに時間がかかると思わなかった」としみじみ。「待っているお客さんがたくさんいる。再開できてうれしい」と喜んだ。

 熊無地区の「お休み処くまなし」も、コーヒーなど飲み物の提供ができず、営業を休止していた。運営する地元グループ「たんぽぽ」代表の中屋裕子さん(74)は「店が開いていないと寂しいという人もいる。再開できるよう準備したい」と話す。22日にメンバー数人で相談し、施設の点検や清掃を行い、23日の営業開始を目指す。

 不便な生活を強いられてきた市民もほっとした様子。熊無地区の丸山志郎さん(71)は、公民館の給水所まで3日おきに60リットルをくみに行っていた。「水道が飲めるようになり、ありがたい。水の大切さを改めて実感した」と話した。垣地信彰さん(73)もペットボトルの水などでやりくりしてきた。「思う存分に使えず、節水しながらだった。ようやく普通の生活ができる」

 姿地区で1人暮らしの寺崎洋さん(82)は、多いときは1日2回給水所に通い、地区外で暮らす家族や友人に風呂や食事などで助けてもらってきた。「洗い物や料理にも不自由なく水道が使えることで、やっと人間らしい生活を送れる」と安堵(あんど)した。

 林正之市長は「市民の皆さんは一日千秋の思いで水道を待っておられたと思う。時間はかかったが3週間ぶりに全域で水道が復旧できて大変良かった」と話した。

 市は21日に5カ所の給水所を閉所したが、宅内漏水の多発を受け、改めて比美乃江小学校に設置した。

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