電話番号はわずか2ケタ シロアリ被害を免れた看板、73年ぶりに「持ち主」へ戻る 那覇市首里の戦後復興を物語る中身とは

 2022年に閉館した首里劇場の3代目館長を務めた金城政則さん(故人)のおいっ子、金城裕太さんが17日、那覇市首里崎山町の瑞泉酒造を訪ね、1950年開館当時の佐久本政敦酒造場(瑞泉酒造の前身)の広告板を返還した。

 金城さんによると、首里劇場は開館当時、地域の事業者の広告板を舞台の両脇に掲示していたという。看板はベニヤ板に手書きのペンキで印字され、〈瑞泉〉と大書された下に社名と住所〈首里市崎山区〉、赤字で〈電話45番〉と記されている。

 約73年前の広告板を手に取った瑞泉酒造の佐久本学社長は「大変貴重な資料でありがたい。戦後間もない首里の復興を、先代が地域と一緒になってやってきた証しになる」と笑顔を見せた。広告板は同社2階の見学室に展示する予定。

 寄贈した金城さんは「戻るべき所に戻ったと思う。劇場はシロアリ被害も多かったが、しっかり形として残っていて良かった」と話した。

 広告板の返還、寄贈は昨年10月に同劇場の解体工事が始まる際、金城さん側から同酒造への連絡があって実現した。

(社会部・城間陽介)

ベニヤ板で作られた首里劇場開館当時の広告板を返還する金城裕太さん(右)と、手に取る瑞泉酒造の佐久本学社長=17日、那覇市首里崎山町の瑞泉

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