意外と知らない? パニック発作とパニック症(パニック障害)の違いを解説

「パニック発作」「パニック症(パニック障害)」という言葉を耳にしたことはありますか?
有名人が公表したというニュースをたまに見かけるようになりました。
この2つの言葉は一見似ていますが、実は「パニック発作=パニック症(パニック障害)」ではありません。
今回は、それぞれの言葉について解説します。

パニック発作とは

パニック発作は20~30分ほど続く激しい恐怖や不安で、長くても1時間以内に自然と治まります。
パニック発作は10人に1人は経験するもので、パニック症でなくても起こります。
緊張や運動後に起こることもあれば、まったく予期せず起こることもあります。
突然出現する動悸や息苦しさに加え、このまま死んでしまうのではないかという恐怖感が出現することもあります。
下記の13の症状のうち4つ以上が当てはまるとパニック発作と考えられます。

1. 息苦しさや息切れ
2. 喉が詰まったような窒息感
3. 心臓の症状(動悸、心悸亢進、頻脈)
4. 腹部の症状(痛みや不快感)
5. 胸部の症状(嘔気や不快感)
6. 発汗
7. 身震いや振戦
8. めまいやふらつき、気が遠くなる感じ
9. ぞっとするような寒気や火照ったような熱感
10. 感覚の麻痺やうずくような異常感覚
11. 現実感消失や離人感
12. 抑えがきかなくなりそうな恐怖や、どうにかなってしまいそうな恐怖
13. 死への恐怖

なお、パニック発作の対処法として、紙袋を口に当てるペーパーバッグ法が用いられてきましたが、過換気後低呼吸による失神や死亡のリスクがあります。
もしもパニック発作が起きたときは、深く呼吸することを意識しましょう。
また、パニック発作を起こしている人がそばにいたら、「大丈夫」と優しく声をかけて背中をさするなどして不安を少しでも和らげてあげましょう。

パニック症(パニック障害)とは

何の前触れもなくパニック発作を繰り返し起こし、「またあの場所に行ったら発作が起きるのではないか」といった恐怖心がふくらみ、発作が起きた場所(例:バスや電車、美容院など)や状況(例:人混みや一人での外出など)を避けようとして、生活範囲が制限されてしまうとパニック症(パニック障害)が考えられます。
パニック症(パニック障害)は100人に1人くらいの割合で起きるといわれており、治療によって改善を目指すことができるともいわれています。
精神科・心療内科での薬物療法と認知行動療法が大きな治療法となります。

◆薬物療法

最近では、抗うつ薬や抗不安薬などが効果的だという報告がされています。
薬物治療と同時に認知行動療法を用いるとさらに効果が高いことも認められています。

◆認知行動療法

認知行動療法とは、自分の「考え方(認知)」や「行動」のパターンによって「困りごと(症状)」が続いてしまう悪循環に気づき、考え方や行動の幅を広げ柔軟にしていくことで、不安や落ち込みなどの「感情(気分)」の困りごとを解決していく心理療法です。

◆その他

生活習慣のなかでは、カフェイン、アルコール、ニコチンなどの物質を過剰に摂取することで症状が出現することもあります。
また、食事習慣や睡眠習慣が規則的でないことも原因となりえます。

最後に

パニック発作は時間が経てば自然と治まるものですが、パニック発作を繰り返し起こし、不安を抱え、日常生活に影響が出ている場合は心療内科や精神科の受診を検討することをおすすめします。
不安を一人で抱え込まず、周囲を頼りながら過ごしてくださいね。

<参考>
・ 厚生労働省「パニック障害(パニック症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)」
・ 松崎朝樹『精神診療プラチナマニュアル Grande第2版』(メディカル・サイエンス・インターナショナル)
・ 厚生労働省「e-ヘルスネット」
・ 厚生労働省研究班(東京大学医学部藤井班)監修「女性の健康推進室ヘルスケアラボ」

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