科学的根拠あるがん検診を 青森県と弘前大がシンポジウム

シンポジウムで、科学的根拠に基づくがん検診の必要性について意見を交わす(右から)斎藤氏、福田学長、宮下知事、高木会長

 全国と比較して高い青森県のがん死亡率の改善に向けて、県と弘前大学は21日、「がん対策連携シンポジウム」を弘前市の同大学創立50周年記念会館で開いた。国が掲げる、がん死亡リスクや死亡率を減らす「科学的根拠」に基づいたがん検診を県内自治体に広げていくため、来場した医療従事者ら約160人が青森県の現状や課題に理解を深めた。

 登壇したのは、宮下宗一郎知事、福田眞作学長、斎藤博・県がん検診管理指導監、高木伸也・県医師会長。県は2022年3月、市町村が行うがん検診を、科学的根拠を前提とし、国の指針に基づく方法に転換することを促す要綱を策定しており、4人は要綱の基となる提言をまとめた委員会のメンバー(宮下知事は当時むつ市長)だった。

 要綱は市町村に対し、国の指針で推奨されている五つのがん検診(胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸=けい=がん)のみを行うよう求めている。しかし、斎藤氏によると、青森県を含む多くの自治体で指針外の検診が行われているという。

 斎藤氏はがん検診のアウトカム(医療の成果)はがんの発見ではなく、死亡率を下げることだ-と強調。「科学的に有効な検診を、徹底的に管理して行い、受診率を上げる。このホップ、ステップ、ジャンプがあって初めて死亡率が下がる」と語った。国の指針にない検診は「過剰診断」につながり、医療現場の業務量が増えたりするリスクがある-とも述べた。

 宮下知事は青森県のがん検診受診率は全国平均と同等以上であるのに、死亡率は04年から19年連続で全国で最も高いとし「やるべき検診を40市町村が同じ基準で行うことが重要。市町村長や現場にどう伝えていくか考えていきたい」と話した。

 福田学長は「(要綱を基に)県内の自治体に説明を繰り返しているが、まだ理解が進んでいないところもある」と語り、要綱の推進に向けた県予算の拡充なども提案した。

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