韓国に入国した脱北者は196人、コロナ明けで3倍に

2023年に韓国に入国した脱北者の数が196人に達したと、韓国の統一省が18日に明らかにした。

統一省は毎年2回、北韓離脱住民(脱北者)の数を発表しているが、昨年上半期は99人、下半期は97人の合計196人だった。これは2022年の67人、2021年の63人に比べると大幅に増えているが、2020年の229人、2019年の1047人、さらに最も多かった2009年の2914人と比べると依然として非常に少ない。

数が増えないのは、北朝鮮当局が新型コロナウイルスの国内流入を防ぐために国境の封鎖や国内移動の統制を徹底したこと、それに伴う経済難などが影響していると思われる。また、一時期に比べ急増したのは、コロナの影響で中国や東南アジア諸国で足止めされていた人が、一気に入国したことが関係しているものと見られる。

内訳を見ると男性は32人、女性は163人、出身地は7割が両江道(リャンガンド)、咸鏡道(ハムギョンド)など中国との国境に接した地域の出身だが、平壌出身者も12.8%(25人)に達した。また、99人(50.5%)が20~30代で、エリート階層に属する脱北者は10人に達し、2017年以降で最も多かった。

このエリート階層とは外交官、海外駐在員、留学生などを指し、一般の脱北者とは別途の施設で韓国に適応するための教育を受ける。これは国家安全保障に著しい影響を与えある可能性があるとみなされるからだ。

統一省傘下の南北ハナ財団が昨年発表した報告書によると、脱北の理由としては、かつて最も多かった「食糧難」(21.4%)に代わり、「北朝鮮の体制が嫌で」(22.6%)が1位となった。

北朝鮮は、体制の脅威になるとして、韓流コンテンツの視聴者・販売者に対して厳しい取り締まりを行っているが、国外からの情報の流入を通じた北朝鮮国民の意識の変化が、脱北の理由の変化や若年化に影響を与えているものと見られる。

また、外交官の脱北増加の背景には、北朝鮮が最近進めている在外公館の撤収が影響している可能性が考えられる。勤務先の閉鎖に伴い本国に召喚されると、二度と海外に出られないばかりか、上納金の納入実績などが悪ければ責任を問われ、地方の閑職に飛ばされる可能性がある。自由で豊かな外国で暮らした外交官とその家族には、日々の糧に事欠くほどの北朝鮮の地方での暮らしは耐えられないだろう。北朝鮮の重罰主義が、脱北を煽っているのだ。

また、昨年の特徴としては、2020年から2022年まではなかった、船を使った集団脱北が2件起きたことがある。

コロナ明けで閉ざされていた北朝鮮の国境は徐々に開かれつつある。依然閉じられたままのところもあるが、これらが開放されると、脱北者の数はさらに増えることが予想される。ただし、国境警備隊員にワイロを渡して川を渡る脱北や密輸は非常に困難になっているため、かつてのように、韓国に入国する年間の脱北者数が3000人近くに達することはないだろう。

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