救急搬送数抑制のため苦渋の選択、入院に至らなければ7700円徴収 三重県松阪市

 三重県松阪市が、救急搬送の急増による医療体制ひっ迫の対応として、救急搬送後に入院に至らなかった場合7700円を患者から徴収する方向で調整に入ったことが分かった。6月1日から県内の救急部を持つ基幹3病院への搬送について適用されるという。

軽症者の利用多く医療体制に負担

 松坂市がこの判断に至った背景には、救急搬送の多さがある。今回の対象となった基幹3病院が受け持つ松阪市と多気、明和2つの町では、2022年、2023年と2年連続で救急搬送数が過去最多を更新し、病院の医療体制に大きな負担となっている。にもかかわらず、市が行った基幹3病院に対する調査(2022年4~6月)では、平日昼間に救急搬送された患者で入院したのは全体の50.6%、休日夜間の場合37.1%となっており、すぐには命に関わらない軽症者の利用が多数であることが判明した。市では本当に命に関わる患者を救う体制を維持するため、入院に至らなかった場合「救急車の選定療養費」名目で7700円を徴収することにし、軽症者には家族の車やタクシー利用を促すことにした。

 「選定療養費」とは、差額ベッド代などの治療に不可欠なものではない医療サービスや、薬剤の送料といった医療そのものではないものの必要な費用について、医療機関側が実費を患者に独自に請求できる項目。2016年4月の健康保険法改正で、200床以上の地域医療支援病院は、紹介状を持たない初診患者から診療費のほかに7000円以上を徴収することが義務化されており、この項目を活用する。市では周知期間を経て、6月1日午前8時以降の搬送例について適用を開始する予定だ。

 ただし患者側にとって、「自身が入院するべきケースかどうか」は判断しづらく、そもそもその判断自体が医師の専権事項である「診断」に属するものであり、運用開始後混乱をきたすことが危惧される。周知期間のあいだにどのような情報提供を行い、対象地域の市民の理解を得られるのかが鍵となりそうだ。

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