「開き直っている。考えてもきりがない」 被災地で迫られる生きる道の選択 「危険」と判断された自宅で生活する人も 

そして、日常生活を奪われた石川県をはじめ各地の被災者の皆さんは、今それぞれが生きる道の「選択」を迫られています。

(徳田早穂記者・1月19日)
「こちらは石川県輪島市です。輪島市では建物の倒壊被害が多く、こちらの建物も1階部分が潰れる形で倒壊している」

能登半島地震の影響で、21日時点では輪島市だけで1006件もの住居が被害を受けています。

20日の朝、がれきを移動させる作業が行われていました。見守っていた中浦政克さん。60歳です。

(中浦政克さん)
「(奥に)家がいくつかあって道が通れないことによって、難民状態になっているので(がれきを)回収しようと」

中浦さんの自宅に大きな被害はありませんでしたが、隣の建物が倒壊。そのため建物の安全性を判断する「応急危険度判定」で一番危険度が高いことを示す「赤い札」が張られていました。

しかし、中浦さんは危険と判断された自宅で生活することを選択。水の補給さえできれば暮らせる状態なので、避難所の負担を少しでも軽くできればと住み続けています。

(中浦さん)
「事業をやっているので、その再建のこともあるし、1日1日状況が変わっていくので、その状況に合わせて対応することを考えていかなければならない。弊社のスタッフもこの地に残っている者がいるので、そういう人たちの心の支えになるというような気持ちもある」

中浦さんはプリンなどのお菓子を作る会社を経営。輪島市に本社を構えています。自宅では母親と妻との3人で暮らしで、地震発生後、母親と妻は金沢市に避難。

中浦さんは、事業再建のため1人残りました。

しかし、危険と隣り合わせの暮らし。余震も続く中、いまの気持ちは。

(中浦さん)
「不安はあるが、結構開き直っている。考えてもきりがないので、起きていく状況に対処する心構えでいる」

「輪島に絶対帰ってくる」 迫られるそれぞれの選択

また、輪島市内ではこんな選択をした人も。

ことし創業80年の時計店を夫婦で営む、山下睦宏さん68歳と妻の久美子さん(62)です。

(妻・久美子さん)
「今まで娘の家で避難していたが、アパートが決まったので荷物を取りに来た」

店がある建物は「応急危険度判定」で赤い札が貼られました。

2階と3階が住居スペースですが、このまま暮らし続けることはできないと考え、1月5日までは避難所で生活。

6日以降は金沢市に住む娘夫婦の家に身を寄せ、これから金沢市が提供する市営住宅に住むことを決めたといいます。

(妻・久美子さん)
「(輪島を離れるのは)悲しいし、娘はよくしてくれているがしばらく金沢で頑張ると皆で言っているので、輪島に絶対帰ってくる」

こちらも、輪島に残り家族と避難所生活を続ける坂口政昭さん(61歳)です。伝統工芸の輪島塗の蒔絵師で自宅は柱や壁が大きく傾き、仕事は続けられなくなりました。危険度判定は赤札です。

(坂口政昭さん)
「2週間(避難所に)住んでかなり生活環境としては整ってきている」

輪島市は、現在被災地以外への「2次避難」を住民に進めていますが、坂口さんが輪島に残る背景には。

(坂口さん)
「これからの生活のことを立て直すことも含めて、自分はここにいた方が情報が入ってくる」

元日の地震で突然、平穏な生活を奪われた能登の皆さん。地元で復興を待ち続けるべきか。離れて暮らしを立て直す道か。それぞれ悩ましい選択を迫られています。

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