「串カツ田中」や「すし銚子丸」が賃上げ まだまだ続く外食産業の待遇改善

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外食産業に賃上げの動きが広がってきた。串カツ店「串カツ田中」を運営する串カツ田中ホールディングス<3547>は2024年1月分から、正社員400人を対象に最大18%の賃上げを行う。

回転ずし店「すし銚子丸」を運営する銚子丸<3075>は2024年2月に、正社員430人を対象に一律3万円の賃上げを行う。

すでに牛丼チェーン店「松屋」を展開する松屋フーズホールディングス<9887>は2024年4月に、2001年以降で最大となる10.9%の賃金の引き上げを決めており、「すき家」を運営するゼンショーホールディングス<7550>も2030年まで毎年賃上げの実施を決めている。

民間調査会社の東京商工リサーチによると、企業の80%強が2024年に賃上げを予定しているという。

外食産業は人手不足に悩まされており、人材を確保するためには、賃上げは避けて通れない状況にある。外食産業の賃上げはまだまだ続きそうだ。

最大18%の引き上げ

串カツ田中ホールディングスは、従業員の待遇向上や人材への投資強化を目的に、賃上げの実施を決めた。

2022年、2023年の賃上げに続くもので、ベースアップ、定期昇給、手当などを含め昇給率は平均で5%、最大16%、特別手当を含んだ場合の昇給率は平均で8%、最大18%となる。

大幅な賃上げの背景には好調な業績がある。同社の2020年11月に営業赤字に転落し3期連続の赤字が続いていたが、2023年11月期に黒字転換し、2024年11月は17.2%の増収、13.9%の営業増益を見込んでいる。

同社では「今後も継続的な賃上げを検討し、従業員の待遇を向上させ、外食産業の変革に努めていく」としている。

2024/11は予想

定昇とは別に一律3万円アップ

銚子丸は職位や在籍年数などにかかわらず一律月額3万円引き上げる。昇給率は全社員の平均が9.3%、店舗勤務者が平均10.1%、2024年新卒社員は12.7%(改定後の大卒初任給は26万6833円)となる。

また毎年5月に実施している定期昇給は、今回の給与引上げとは別に例年通りに行うという。

同社も業績は好調で、2024年5月期は9.3%の増収、2.04倍の営業増益を見込んでおり、コロナ禍前の2019年5月期の実績を上回る。

同社では「コロナ禍の中、給与を抑制していたため大幅に引上げることにした。これによって優秀な人材を確保し、企業価値の向上を目指す」としている。

2024/5は予想

賃上げ機運は高まっているが、上げ幅は縮小か

東京商工リサーチは2023年12月1日から11日までの間、賃金引き上げに関するアンケートをインターネットで実施し、有効回答4581社を集計、分析した。

それによると、2024年は82.9%の企業が賃上げを実施する予定であることが分かった。ただ、政府が2024年は2023年を上回る賃上げを求めているものの、賃上げ幅が「2023年を超えそう」と回答した企業は、11.6%にとどまった。

同社では「賃上げ機運は引き続き高まっているが、物価高騰などで収益が圧迫され、さらなる賃上げには二の足を踏む企業が多いようだ」としている。

文:M&A Online

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