大企業など7社「リバースピッチ」でスタートアップにアピール Conference of S venture Lab.

イベント登壇者

M&A仲介のストライク<6196>が運営するS venture Lab.は2023年12月21日に、東京都港区のARCH Toranomon Hills Incubation Centerで「第16回 Conference of S venture Lab.」を開催した。

今回はスタートアップとの協業を志向する大企業やファンドなど7社が、具体的な事業内容や課題などをプレゼン(リバースピッチ)し、スタートアップ企業から技術やサービスの提案を募った。

登壇したのはChatwork、大同生命保険、ココナラスキルパートナーズ、TOPPANホールディングス、セゾン・ベンチャーズ、セイノーホールディングス、NTTデータ。概要は次の通り。

42万社にさまざまなツールやサービスを提供

Chatworkからは、経営企画室ユニット長兼Chatworkスーパーアプリファンドパートナーの森雅和氏が登壇。「Chatworkはビジネスチャットを手がけており、導入社数は42万社ほどで、650万人ほどが使用している。中小企業の利用が多く、全体の8割ほどに達する」と説明。

Chatwork 森雅和経営企画室ユニット長兼Chatworkスーパーアプリファンドパートナー

同業他社には、エンジニアが多く使っている企業や、大企業の利用者が多い企業などがあるため、これら以外のところを取り込んでいく戦略を取った結果、中小企業の利用が多くなったという。

今後はビジネスチャットだけでなく、チャットワークの利用者に、さまざまなツールやサービスを提供していく計画で、M&AやCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を通じて「42万社ほどの利用企業にリーチしたいスタートアップの方々と組ませていただきたい」と結んだ。

中小企業のSDGs活動を支援

大同生命保険からは、共創戦略課長の土川陽平氏が登壇。「大同生命は企業に特化した生命保険会社で、中小企業の経営者の方が万一の時の事業継続を保険で支えてきており、契約の98%が企業になっている」と現状を披露。

大同生命保険 土川陽平共創戦略課長

共創戦略部は6年前に設置され、デジタル変革と新たな領域の探索という二つの柱で活動。M&A投資を通じた情報収集や関係構築、デジタル通貨の実証実験、DX(デジタル・トランスフォーメーション=デジタル技術で生活やビジネスを変革する取り組み)の体制整備などに取り組んできたという。

事業開発の一例として、SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)に取り組みたい企業に、環境配慮型のスタートアップなどをマッチングすることで企業活動を支援するプログラムを紹介し「日本全国の中小企業にサステナビリティを勧める技術やアイデアを持つパートナーを募集したい」と呼びかけた。

事業構築メンタリングとしても有用

ココナラスキルパートナーズからは、インベストメント・マネージャーの梅田華衣氏が登壇。「ココナラスキルパートナーズはファンドを運営しており、出資者はすべて外部の投資家から募っており、ほぼ独立系のファンドに近い動きをとっている。ファンドの規模は16億円でシード、アーリーを中心に一部レイターのスタートアップに投資をしている」と事業を紹介。

ココナラスキルパートナーズ 梅田華衣インベストメント・マネージャー

同社は質量ともに日本で最も経営をサポートするベンチャーキャピタルを標榜しており、創業から上場まで実現した経営者が前面に立って事業を進めていることや、一流のスキルパートナーによる投資先への無償の経営支援が特徴という。

「スタートアップに積極的に投資しているので声をかけてほしい。投資面談という面だけでなく、事業構築メンタリング(助言や支援)としても有用と考えている。事業会社との協調投資にも取り組みたい」と締めくくった。

次の成長エンジンを創出

TOPPANホールディングスからは、事業開発本部ビジネスイノベーションセンター戦略投資部係長の牧野理香氏が登壇。「TOPPANは印刷からスタートした企業だが、ペーパーメディアの売上高比率は低下しており、印刷以外のところをしっかりとやっていかなければならないという危機感がある。今、デジタルとサステナブルを中心に、新しい価値が提供できる会社になることを目指している」と説明。

TOPPANホールディングス 牧野理香事業開発本部ビジネスイノベーションセンター戦略投資部係長

こうした流れの中、2016年にCVCを創設し、オープンイノベーション(社外の知識や技術を取り込むことによる革新)によって、次の成長エンジンを作り出すことに取り組んでいるという。

投資対象はDXとSX (サステナビリティ・トランスフォーメーション=持続可能性に比重を置いた戦略)を中心に、ヘルスケア、センサー、カーボンニュートラル、メタバースなど幅広く考えており「私たちのアセットに興味を持っていただける方と一緒にやっていきたい」と締めた。

リターンではなく事業領域の拡大が目的

セゾン・ベンチャーズからは、取締役の林田綾沙子氏が登壇。「セゾン・ベンチャーズはクレディセゾンのCVCとして2015年に設立されており、直接投資を行っているため、投資期限はなく、長くかかわれるのが特徴。またメンバーは全員クレディセゾンとの兼務のため事業連携などの案件はすぐにクレディセゾンにつなぐことができる」と説明した。

セゾン・ベンチャーズ 林田綾沙子取締役

同社はシード・アーリーステージのスタートアップが出資領域で、2023年10月末時点で78社への出資実績があり、この中からIPO(新規株式公開)やM&Aの事例も生まれているという。1億円以上の出資や事業シナジーの程度によってはクレディセゾンからの出資にスイッチすることも可能と説明した。また、リターンを求める出資ではなく、クレディセゾンの事業領域の拡大を目的にしていることから、クレディセゾンのビジネス領域と提供アセットについても解説。そのうえで、ビジネスの共創について「現在、ターゲットを絞った事業展開を強化しているため、富裕層向けのサービスや若者向けのサービスを手がけている企業との相性はいいのではないかと考えている」とした。

オープン・パブリック・プラットフォームを構築

セイノーホールディングスからは、オープンイノベーション推進室主事の髙橋一馬氏が登壇。「セイノーホールディングスはトラックの幹線輸送をメイン事業にしているが、不動産や自動車販売、農業などいろいろなことに挑戦している。オープンイノベーション推進室はスタートアップと連携するCVCのほか新規事業創出とM&Aの三つの機能を持っている」と説明。

セイノーホールディングス 髙橋一馬オープンイノベーション推進室主事

オープンイノベーションのチームは、2016年に立ち上がり2019年にCVCがスタートした。現在までに17、8社に投資してきており、2023年には2号ファンドも組成されている。

今後は2024年問題(トラックドライバーの時間外労働の上限規制)をはじめ、いろいろな問題がある中で、オープン・パブリック・プラットフォーム(同業者や地域と連携し、開放的で公共性の高い物流プラットフォーム)を構築して、共創することを目指すという。

家族を支える新しいサポーターを育成

NTTデータからは、ソーシャルデザイン推進室課長の内藤かおり氏が登壇。「ソーシャルデザイン推進室では、社会課題に取り組んでおり、その中の1テーマとして在宅介護にターゲットを絞った取り組みを展開している。超高齢化社会の到来によって、介護者の負担が増大しているが、介護者である家族のケアができていないところに課題を感じている」と問題を整理。

NTTデータ 内藤かおりソーシャルデザイン推進室課長

さらに家族のニーズを中心とした世界を作っていくために、公的サービスだけでなく、民間マーケットを拡大していき、リアルとデジタルを融合し、家族を支える新しいサポーターを育成していきたいと強調。

そのうえで「リアルとデジタルを融合する中で、リアルの部分をパートナーと一緒にやっていけたらいいと考えている」と連携を呼びかけた。

文:M&A Online

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