立件されずも冷ややか選挙区で“おわび行脚” 自民安倍派の西村議員 裏金問題後、初の兵庫入り

明石コミュニティー懇話会であいさつをする西村康稔前経済産業相=22日夕、明石市松の内2

 自民党安倍派の実力者「5人組」の一人で、前事務総長の西村康稔前経済産業相(衆院兵庫9区)が、政治資金パーティーを巡る裏金事件後、初めて地元に戻り、おわび行脚を続けている。自身は立件されず、22日には明石市内であった会合で「何らやましいところはない」と改めて不正への関与を否定。一方、地元有権者らは「逃げ切ったという発想は駄目。再発防止を」と厳しい見方を示した。

 「大変お騒がせし、心配をおかけした」。22日夕、明石市内で開かれた明石コミュニティー懇話会。あいさつに立った西村氏は、集まった経営者らに神妙な面持ちで語った。

 自身の政治団体に5年間で計100万円の還流があったことを念頭に、「政治資金として活用していた」と私的流用がないことを強調。「(今回のことは)神様がくれた贈り物だと思い、いったん立ち止まり、地元のまちづくりを手伝いたい」と締めくくった。

 派閥の解散を決めた19日夜の派閥会合後、東京で会見に臨んだ西村氏は、還流について「会長と事務局長の間で慣行的に行われた」と釈明。還流中止が決まった時期に事務総長の任にあったが「(収支報告書への)不記載を指示したり、還付を了承したりしたことはない」と関与を否定した。

 西村氏はその翌20日、事件が明らかになった昨年末以降初めて、地元・明石入り。地盤の淡路島も含めて、業界団体や神社などの新年会を精力的に巡った。

 参加者らによると、事件に触れて「ゼロからやり直す」と語り、大臣職を辞したことから「無役になりました。また明石のために、使ってください」とアピール。出席者一人一人と握手して回ったという。

 地元有権者は西村氏らの姿を冷ややかに見ている。明石市内で飲食業を営む男性(51)は「インボイス制度の導入で負担を強いられているのに、なぜ政治家は不透明なお金を動かしても、罰せられることが少ないのか」と不満を漏らす。

 洲本市の自営業の男性(69)も「政治のお金の流れは全て銀行を通して記録に残すなど、見えるようにすべきだ。地元に帰ってきたのなら、有権者に行き渡るように説明してほしい」と求めた。(松本寿美子、荻野俊太郎)

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