QIC、世界で約3兆円超のインフラ投資~民間投資が進む豪州の優位性

(提供:不動産経済ファンドレビュー)オーストラリア最大級の機関投資家であるクイーンズランド州投資公社(QIC)は、全世界で10兆円規模(約668億米ドル)を投資するオルタナティブ投資専門の長期資産運用会社である。そのうち、インフラ投資部門は、インフラアセットを対象に世界で約3兆1000億円(210億米ドル超)を運用する。QICのグローバル・インフラストラクチャー部門責任者であるロス・イスラエル氏が、豪州におけるインフラ投資市場の足元と投資戦略を弊誌に語った。
オーストラリアの優位性は?――長期的な観点からのメガトレンドとして、脱炭素化と脱グローバル化が挙げられる。豪州は、世界的エネルギー転換のためのインフラ整備に不可欠な鉱物資源の供給に対して重要な役割を担う。また、地政学リスクの高まりやサプライチェーンの見直しが行われる現状、特に成長著しい東南アジアへのアクセスポイントとして、供給ラインの短縮化などから非常に魅力的な市場と言える。
投資戦略は?――コア及びコアプラスの戦略に注力し、エネルギー・公益、輸送、社会・健康の3つのセクターへ投資を行っている。エネルギー分野では、再生エネルギー・ソリューション、ガス貯蔵施設や電力・水関連などが対象となる。輸送では、港湾、空港、有料道路とその付帯施設に投資を行う。日本では設備運営上のリスクから、いずれも民間投資が進みづらい分野が多い。一方、豪州の空港は全て民間の保有であるほか、インフラ投資に関して運営リスクを心配する投資家は少ない。リターンがきちんと予測できる優良なアセットだと認識されている。健康分野は、日帰り手術などを担う地域医療機関などに投資を行い、小規模医療機関の地域に対するインフラ機能を支えている。
今後をどう見通す?――これまで大型の再生可能エネルギー施設に投資を行ってきたが、さらに豪州では小型の再エネ施設やマイクログリッド、消費者が電力使用量を把握するスマートメーターなどにも投資が及んでいる。世界でネットゼロを達成するには、年間5兆ドルとも言われる規模の投資が必要で、投資のチャンスは多く存在する。特にアメリカはインフレ抑制法に盛り込まれたクリーンエネルギー推進向けのインセンティブがあり、魅力的な市場だと見ている。また日本でも急速に市場が広がり、良い機会を捉えて投資を行う可能性はある。

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