ソウルから1時間の日帰り観光!美景と陶芸の里、驪州(ヨジュ)【気になる韓国、ソウルの今vol.29】

驪州では米飯定食の店で米の美味しさを確かめたい

渡航者数もパンデミック前の水準に戻り、再び近くて近い国になった韓国。

今回は、ソウルからバスで約1時間で行ける日帰り観光スポット、驪州(ヨジュ)の魅力をソウル在住の女性ライターが紹介する。

【全画像】ソウルから日帰りで行ける観光地、驪州(ヨジュ)のおすすめスポット

私が住むソウルの東の端・江東区は、日帰り観光に適したエリアへのアクセスがよい。ソウルでは2番目の規模の東ソウルソウル総合ターミナルが近くにあるからだ。

平日のよく晴れた日、バスで漢江を南東方向に下って、美景と陶芸の街、驪州市へ出かけた。

韓国の北東部・江原道にある太白市の剣龍沼を源流とする大河・南漢江は、江原道の旌善や寧越、忠清道の丹陽や忠州、京畿道の驪州を経て、楊平で北漢江と合流し、ソウルを横断する漢江となる。

漢江は地域ごとに朝陽江とか東江など多様な別名で呼ばれるが、驪州では驪江(ヨガン)と呼ばれた。驪州にはバスや地下鉄に乗れば1時間ちょっとで行ける。

渡し場を中心に栄えた町

バスが西驪州インターを下りてしばらく東方向へ走ると、左手に南漢江が見えてくる。

この川は朝鮮王朝時代に物流と人々の移動に重要な水路で、驪州には12もの渡し場があった。

なかでも梨浦渡し場と潮浦渡し場は、朝鮮4大渡し場に数えられるほど名が知られていた。

川辺には腰を掛けて景色を眺められるあずまやが10以上もあった景勝地だ。高麗時代の昔から多くの詩人墨客が留まり、この地をモチーフにした作品を残している。

リバーサイド寺院、神勒寺

神勒寺の『不二門』。解脱門とも呼ばれる。この門を抜けると俗世を離れて浄土の世界に入れるという

韓国の寺院は深い山の中、あるいは市街にあるのがふつうだが、鳳尾山の南側の麓に位置した神勒寺は、南漢江と砂浜が眺められるところにあり、絵になる場所として知られている。

驪州駅や驪州市外バスターミナルからのアクセスもよい。

神勒寺国民観光団地の入口から神勒寺へ至る川沿いの道を歩く。

神勒寺のある場所の川向うが朝鮮王朝時代からの渡し場だ。かつては江原道の寧越と旌善から運ばれてきたイカダや塩を積んだ船、商人たちを運んだ帆船などが出入りした。

煩悩と解脱は表裏一体であることから名づけられた不二門を通り抜けると、樹齢600年の巨大なイチョウとクヌギが遠くに見える。

その横には神勒寺の殿閣が広がっている。神勒寺は朝鮮王朝時代の世宗大王の王陵を守護するための寺院として有名だ。

裏手には鳳凰の尾に似ていることから鳳尾山と呼ばれる海抜156mの低い山がある。以前は俗世から離れたところという意味で俗離山とも呼ばれたという。

本堂に入る前に通る中門のような楼閣は九龍楼と呼ばれる。

ここには9頭の龍が留まるという伝説がある。神勒寺は新羅の真平王の時代、元暁大師(617~686)が創建したという説が有力だ。

元暁大師の夢に一人の老人が現れ、池を指してここは神聖な場所だと告げた。元暁は池を埋めて寺を建てたが、そこがまさに『神勒寺』だったという。

池を埋める前、池から9頭の龍が昇天したという伝説にちなんで今の楼閣の名前になったのだ。

楼閣は色あせた丹青と新たに重ねられた板の色のコントラストが鮮明で、神勒寺の長い歴史を物語っている。

色あせた丹青に積年が感じられる九龍楼

白い大理石で作られた多層石塔の前で合掌する。石塔の基壇に刻まれた力強い雲と龍は見応えがある。

極楽寶殿と呼ばれる大雄殿の中に祀られた木造阿弥陀如来三尊像は、異国的で端麗な姿だ。拍子木の音が四方に響き、清々しい気持ちになる。

参拝客で賑わう極楽寶殿

チャン・ヒョクとイ・ダヘ主演ドラマ『チュノ~推奴~』の撮影地

大雄殿から川のほうへ向かうと、高さ9.4メートルの大きな多層塼塔が現れる。

花崗岩で作った基壇の上に土で焼いたレンガが積まれている。少々いびつだが、不思議な調和を見せている。国内に数基しか残っていない多層塼塔であり、高麗時代のものとしては唯一の文化財だ。

昔は水上交通で漢陽(今のソウル)に向かっていた船頭たちが、川に立ち込めた霧で視界が遮られると、高くそびえる多層塼塔を見て自分の位置を確かめたという。

この逸話を知ると、古びた塔が頼もしい灯台のように思えてくる。

神勒寺の美しさは、川沿いにある。広々とした岩の上のあずまや・江月軒。その隣にある三層石塔。その脇を静かに流れる驪江。

ここは高麗時代末期、羅翁禅師(1320~1376)が鬼籍に入り、荼毘に付されたところだ。

羅翁禅師の号から取った江月軒は夕暮れどきや月明りの夜、あるいは夜明けに霧が立ち上るときに映える。

江月軒と驪江

江月軒という名にふさわしく、月が明るく満ちたとき、月光に照らされた驪江と向い側の砂浜が一幅の絵を成したという。

ここはチャン・ヒョクとイ・ダヘ主演ドラマ『チュノ~推奴~』の撮影地でもある。

私も江月軒に立って川向うを望むが、月の光に照らされていたはずの砂浜は見えない。近現代の河川事業によって消えてしまったのだ。

それでも、あずまやに座って驪江を眺めながら川風に吹かれるのは乙なもの。悠々と流れる驪江がすべてを受け入れてくれるようだ。

この風光には、文筆家でもあった羅翁和尚が残した「青山歌」が似合う。

青山は私を見て 黙って生きろと言う 靑山兮要我以無語

青空は私を見て 清い心で生きろと言う 蒼空兮要我以無垢

欲も怒りも脱ぎ去り 聊無怒而無惜兮

水のように風のように生きて行けと言う 如水如風而終我

驪州は利川と並ぶ陶芸の里

驪州陶磁器文化センターの屋外イベントで陶磁器を作る驪州の陶芸家

京畿道の驪州・利川・広州は、韓国の陶芸文化を歴史的に俯瞰できるトライアングル地帯だ。

驪州にある『陶磁器文化センター』には陶芸体験場と3つの展示館があり、芸術作品から小物まで実物を見てさわって、買うことができる。

ここで毎年10月に開催される「驪州陶磁器フェスタ」には、千年続いてきた陶磁器の里・驪州で丹精込めて陶磁器を焼き続けている40余りの工房が参加している。

2024年はぜひ出かけてみてほしい。

(mimot.(ミモット)/ チョン・ウンスク)

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