通話内容から詐欺確信、女性に拒絶されるも声かけ被害防ぐ ATMで作業中の警備員2人に署長感謝状 尼崎

特殊詐欺被害を未然に防ぎ、署長感謝状を受け取る警備会社セコムの松本峻晃さん(中央)と安田龍一郎さん(右)=尼崎市潮江5、尼崎東署

 通話内容から詐欺を確信し、60代女性の被害を防いだとして、兵庫県警尼崎東署は警備会社セコムの警備員松本峻晃(たかあき)さん(38)と安田龍一郎さん(57)に署長感謝状を贈った。

 2023年12月中旬の昼前、2人はJR尼崎駅前のATMコーナーのバックヤードで紙幣を補充していた。パタパタパタ…。機械が紙幣を数える中、「今来ました」という女性の甲高い声が聞こえてきた。携帯電話のスピーカー機能を使って通話しているようで、安田さんが耳を澄ますと「残高照会をしてほしい」という男の声が聞こえた。詐欺の可能性があると判断し、作業に集中していた松本さんに声をかけ、2人でバックヤードを出た。

 表では女性がATMの画面を操作していた。「どうしましたか」。松本さんが声をかけると、女性は驚いた様子で「大丈夫、大丈夫」と繰り返す。スマホからは「誰としゃべっているんだ」「その場から離れろ」などの声も聞こえてきた。詐欺を確信したが、呼び止める間もなく女性はATMコーナーを飛び出した。

 補充作業が途中だったため、安田さんが残り、松本さんが後を追う。「詐欺の可能性があるので通話をやめてほしい」。女性に伝えるも「本当に大丈夫なんで…」と拒絶される。自分では手に負えず通報も考えていると、偶然、目の前に警察官が歩いていた。松本さんはすぐに警察官に声をかけて事情を説明し、女性を引き渡した。

 2人が作業を終えてATMコーナーを出ると、警察官と女性はまだそこにいた。「大丈夫でしたか」。尋ねられた女性は「完全に信じ切っていました。本当にありがとう」と安心した様子で感謝を述べた。女性の元に「介護保険の還付金がある」などとのうその電話があったという。

 安田さんは「声をかけたことで被害を防げてよかった」。松本さんは「詐欺被害の疑いがある人への対応訓練を受けていたからこそ、冷静に行動できたと思う」と話した。(池田大介)

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