風邪の母、薬服用の姿に「もっと効率よくできるはず」 芦屋の高校生が便利な錠剤ケース開発、特許を取得

取得した特許について説明する神吉佳佑さん=神戸市中央区海岸通、N高校・S高校神戸キャンパス

 効率的に錠剤を保管して服用できるケースを開発したとして、通信制のN高校2年、神吉佳佑さん(17)=兵庫県芦屋市=が特許を取得した。風邪をひいた母親が複数の薬を市販のケースに一回分ずつ分けている姿を見て、もどかしい気持ちになったのがきっかけだった。トレードマークの白衣に身を包み、認知脳科学の研究に励む。(村上貴浩)

 錠剤ケースは片手サイズ。薬局で必要な錠剤を装填(そうてん)してもらうことで、服用時に必要な個数を取り出すことができる。誤用を防ぎ、高齢者が薬の包装を誤飲する事故もなくせるという。

 幼少時からものづくりが好きで、5歳ごろには鉄道玩具のねじを外して違う形に改造して遊んでいたという。中学1年の時、欲しいおもちゃの部品が高額だったため、「自分で作ろう」と考え、貯金で3Dプリンターを購入。そこから興味は一気に加速した。

 中学2年の時、母が風邪をひいた。毎回、たくさんの薬を取り出し、数えながら服用している姿を見て、「もっと効率よくできるはず」と錠剤ケースの開発を始めた。「昔から効率の悪いものを見るとモヤモヤする性格だった」と笑う。

 アイデアが浮かぶたび試作したが、何度も壁にぶつかった。錠剤は円形や三角形など数種類の形があり、大きさもバラバラのため、全ての形状や大きさに適応させることが難しく、一度挫折した。

 高校入学後、再びチャレンジ。学校にいる間に複数の可動式の仕切り板で錠剤を整列、排出する機構をふと思いついた。「いける」。急いで自宅に戻って3Dプリンターで作ってみた。仕切り板が互いに干渉するトラブルもあったが、大きさを微調整することで思い通りの動きが実現した。23年1月、特許庁に申請。1錠ずつではなく、1回服用分を一度に出せる点などが評価され、同10月に特許を得た。

 とはいえ、ケースのサイズやボタンの押しやすさには改良の余地があるといい、神吉さんは「より使いやすいデザインなどの研究を進め、製品化を目指したい」と話した。

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