「入館料はいくら?」→「お客様が決めて下さい」静岡の水族館が異例システム 導入の背景に特殊な立地

静岡市の水族館「スマートアクアリウム静岡」は22日、来館者がサービスを体験した後に自ら決定した金額を支払う「ポストプライシング」を期間限定で試験的に導入することを発表した。

通常の水族館では一定の入館料を先払いするシステムが主流だが、「ポストプライシング」は全てを観覧した後に出口で金額を支払うシステム。さらに、その金額は客側が自由に設定できる。つまり「面白くなかったから」と料金を“支払わない”選択も可能ということ。同水族館の担当者は「利益よりもまず集客につながるにぎわいを作りたい」と挑戦の背景を語った。

同水族館はJR静岡駅近くの百貨店「松坂屋静岡店」本館7階内に2022年4月にオープン。ワンフロアのみと小規模ながら、水槽が50弱、およそ100種・2200匹の生きものを展示している。しかし、百貨店の中という特殊な立地条件のため、集客には苦戦している面もあるという。閑散期にあたる冬季、特に平日は集客面の苦戦が顕著。「デパートにある水族館なんて大したことないだろう」や、通常入館料1400円(大人)に対して「ワンフロアで1400円は高い気がする」などの意見も届いていたという。

にぎわいの創出のために、まずは気軽に来館してほしい―。そこで試験的に導入したのが「ポストプライシング」。国内では1日体験イベントなどでわずかに例があるのみで、常設施設、ましてや水族館業界では異例の取り組みといえる。場合によっては赤字の可能性も大いにあるが、「まずは一度来てほしい」と集客の流れをつくることに重きを置いた。

実施期間は2月1日~3月29日(平日限定)の約2カ月。また、支払金額に応じたオリジナルグッズのプレゼントも用意しており、同担当者によれば最終決定ではないものの、1000円以上を一つのボーダーとして調整しているという。

前代未聞の取り組みは同担当者にとっても「本当に赤字になるのか、どうなるのかも分からない」と未知の領域だが「少しでも社会実験的にデータを取って活用していければ」と前を向いた。

(よろず~ニュース・藤丸 紘生)

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