沖縄2離島、住民悲願の15年ぶり空路 年間1億4千万の赤字が前提 負担する地元に大きな不安

波照間空港に着陸する第一航空のDHC6-400型機=22日午前10時ごろ、竹富町・波照間島

 【八重山・宮古】「新石垣-波照間」「新石垣-多良間」の二つの航空路線が22日に開通した。2度にわたって延期された末の就航。特に波照間は15年2カ月ぶりに空の便で島外と結ばれ、島民らは悲願の実現を喜んだ。(八重山支局・平良孝陽、宮古支局・當山学)

 波照間空港では「祝 航空路線運航再開 日本最南端はてのうるまの翼」と書かれた横断幕を掲げ、島民らが歓迎した。島には石垣と結ぶ定期船はあるものの、冬場は悪天候のため欠航が相次ぎ、空路の再開を望む声が多かった。

 初便に乗った前泊正人竹富町長は運航再開に「島の利便性が図られ、島の振興発展に大きく寄与すると改めて感じた」と感慨深そう。波照間公民館の仲底善章館長は「この路線がずっと続くように島民も協力したい」と声を弾ませた。

 50代女性は、出産前に同空港から石垣市内の病院に通っていた当時を振り返り「あれから孫も生まれた。島外の娘や息子と会える機会もこれで増えるかな」と語った。

 多良間村でも、石垣との路線再開を祝った。見舞いや伝統行事で石垣を訪れる際、これまでは宮古空港を経由しなければならず、不便を強いられていた。村議として再開を推進してきた福嶺常夫さん(77)は「両島の交流や観光の促進につながれば」と期待した。

■赤字前提 県と町村負担

 22日に就航した新石垣-多良間、新石垣-波照間の両路線は、年間で計約1億4千万円の赤字が見込まれている。全て満席でも採算が見込めず、欠損分は県と町村が負担する仕組み。運航の安定化や、定期便化につながる利用促進の取り組みが重要となる。

 県によると、新石垣-多良間路線は年間156往復で1341人、新石垣-波照間は年間104往復で894人の利用を見込む。

 しかし新石垣-多良間は年間8千万円、新石垣-波照間は年間6千万円の赤字となる見通し。現在の補助事業では欠損分の負担は県と町村で1対1となっており、小規模な離島町村には負担が大きい。そのため県は、県と町村が2対1の負担割合になるよう、見直しを検討している。

 将来的には運航本数を増やし、月16往復以上という条件を満たす「定期便化」も視野に入れる。定期便化できれば、国も欠損補助に加わり、最大で欠損分の2分の1を国が負担することとなるため、県や町村の負担分が軽減される。

 ただ、定期便化のためにはスタッフが常駐する事務所を多良間空港や波照間空港に設置する必要があるなど、費用や人員確保などが課題となっている。

 県交通政策課の西垣紀子副参事は「両路線は生活路線として重要であり、まずは安定的な運航をしていきたい。県としてもコスト低減に取り組み、離島の定住条件の整備につながれば」と話した。(政経部・仲村時宇ラ)

15年2カ月ぶりの運航再開を祝う波照間島の住民ら=22日、竹富町の波照間空港

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