ジャン=リュック・ゴダールが手掛けた最後の映像作品 「遺言 奇妙な戦争」特報

2024年2月23日より劇場公開される、2022年9月に亡くなったジャン=リュック・ゴダールが手掛けた最後の作品「ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争」の、特報映像が公開された。

特報では、ショスタコーヴィチによるスコア(弦楽四重奏曲第8番)とともに描き出される荒々しい赤と黒のイラストなどが映し出されている。ノートのページを思わせる白い紙に展開されるのは、ゴダール自身が書き記し、色付けした紙や写真、文章によって構成されたコラージュの数々。「感情(sentiment)」「情熱(Passion)」など断片的なワードがちりばめられたコラージュや、「暗い部屋で黒猫を探すのは難しい」から始まるセリフが音符のように配置された1枚など、ゴダールによる総合芸術の一端が明らかにされている。

ゴダールに託された正確な指示をもとに、本作を完成させたのは撮影・編集を手掛けたファブリス・アラーニョは、「2020年1月、ジャン=リュックが仕事を進めるのに合わせ、私はテクニカルテストを行っていましたが、新型コロナウイルスによるパンデミックやロックダウンが進展に強くブレーキをかけました。そんななかでもジャン=リュックは紙の上での仕事を進めます。脚本を何稿も書き直し、この映画について告げようとしていました。そこには作るべき映画の神髄が見え、また原点に立ち戻る作業であり、その過程を通してすでに映画は存在していました!」と制作過程について明かしている。

「ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争」は、絵、写真、映像がコラージュされ、音楽やナレーションが一つになった短編。本作の撮影・編集を手掛け、ゴダールに最も近いスタッフだったファブリス・アラーニョは、「ジャン=リュックは紙に付箋を付けて映画のリズムをイメージし、映像と音を指示していたのです。私の目の前に映像が広がるのが見えました。今、この瞬間に存在する映画でした。驚くほどシンプルながら、映像と音が整っていくさまは、とても力強いと感じました。ジャン=リュックはこの映画を見て、”これが私の最高傑作だ”と言いました」と語っている。

フランスのメゾンであるサンローランが立ち上げた映画会社「サンローランプロダクション」の製作による本作は、ペドロ・アルモドバル監督、イーサン・ホークとペドロ・パスカル出演の「ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ」に続く短編作品。サンローランのクリエイティブディレクターであるアンソニー・ヴァカレロは、「本作を通じて、ジャン=リュック・ゴダールの類を見ない創作の過程のあらましが明らかになる」「そして同時に、決して日の目を見ることのない映画について、芸術家が思い浮かべたアイデアや参照元、イメージなどを示す草案でもある」と述べている。

【作品情報】
ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争
2024年2月23日(金・祝)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、ヒューマントラストシネマ渋谷にてロードショー
配給:ファインフィルムズ/コムストック・グループ
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